夫の子ではないけれど、夫の子として育てます。

しゃーりん

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フォルティアがラフォーレ侯爵も領地で暮らせと言ったことで、侯爵は怒ってフォルティアに言った。


「なぜ、私も領地で暮らさねばならんのだ!侯爵はまだ私だぞ!!」 


まあ、そう言うとは思っていた。


「ですが、ここ何年も王家主催での招待がない限り、社交していませんでしたよね?お義母様も観劇やお茶会から遠のいていたはずです。ディカルド様がお亡くなりになったことで、喪に服す期間はどのみち社交はできません。」

「それは、そうだが。仕事のサインは必要だろう!」

「それは領地でも可能ですし、私を代理に任命して下されば私が処理いたします。
ここ数年、正しく届け出できていない納税関係についても、見直している最中です。
お義父様が王都に居続ければ、虚偽報告で呼び出しを受けるかもしれません。ですが、領地で療養しているということにすれば、私が対応いたします。
お義父様のお好きな狩猟もいつでもできるようになりますよ?」


侯爵の趣味は狩猟。
毎年、領地で楽しんでいるらしい。
この屋敷にあるはく製も全て運んで、領地で暮らしてほしい。


「きょ、虚偽報告……療養、か。息子が死んだんだ。おかしくはないな。」


自分がどう対応していいかもわからないため、領地に逃げる気になったらしい。

 
「ええ。煩わしい執務は任せてください。お義父様にお願いするのは私の代理権とお腹の子が跡継ぎだと認める書類、そしてお義母様への対応です。」

「……なんだか、乗っ取られるみたいだな。」

「いやですわ、お義父様。ディカルド様の子なのですから孫ですよ?たとえ、カールの子だと疑う気持ちが残っていたとしても、この子は紛れもなくラフォーレの血筋なのですから乗っ取りではありません。」 

「そう、だな。」
 
「それにこれは、父からの温情でもあるのですよ?お義父様がこの子を孫で侯爵家の跡継ぎだと認めてくださるからこそ、今後も貴族として衣食住に困らない暮らしができるのですから。」

「認めなければ平民、か。ははっ。確かに、温情だな。」


侯爵はフォルティアに従うようだった。いや、従わなければ平民になるのだと理解したのだ。

夫人は納得するだろうか。
もう正気を失いつつあるように見えるが、正常に戻る可能性がないわけではない。

その上で、侯爵がどの選択肢を選ぼうとも、フォルティアは構わなかった。
  


 
侯爵は夫人に、カールがフォルティアを襲ったというのは金を引き出すための虚言だったと話したが、夫人は信じなかったらしい。
そのため、侯爵は領地へと一緒に向かったが、とうとう言動が怪しくなってしまったらしく、敷地内にある小さな別邸に軟禁しているということだった。

精神安定剤を飲まされている夫人は、現実と夢の世界を行き来しつつ過ごしているという。



邪魔者がすっかり消えたラフォーレ侯爵家で、フォルティアが穏やかに過ごしている。
周りにいる者はほとんど実家から派遣された者か、実家が面接して侯爵家に雇われた者になった。

確かに、コールタッド伯爵家がラフォーレ侯爵家を乗っ取ったみたいになっている。

しかし、フォルティアのお腹の子は間違いなくラフォーレの血筋なので乗っ取りではない。

 

 
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