初恋は沼、あるいは闇

しゃーりん

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マリアローズの妊娠がわかったのは、彼女が貧血を起こして倒れたためだった。
その際に足に怪我をしたため動けない。 

妊娠を知ったマリアローズは、自分でも体の異変を感じていたのだろうか、驚かなかったという。
どちらかと言えば、嬉しく見えなかったとか。
 
ジャレッドは何度もマリアローズに呼ばれたが、自分から足を運ぶ気はなかった。

 
公爵が調べた結果、マリアローズの静養は国王夫妻の指示だったようで、内密に理由を聞いたらしい。


「マリアローズのお腹の子の父親は、おそらくサージ皇国の皇太子ではないかとのことだった。」

「サージ皇国の皇太子!?あ、国王陛下の記念式典に来られていた時に?」


国王陛下の在位二十周年式典には近隣国からも参列があった。
国によっては数週間滞在していたところもある。
 

「以前からマリアローズに好意を抱いていた皇太子が妃の目を盗んでマリアローズを誘ったらしい。マリアローズは自分に夫がいないということもあり断り切れなかったようだが、妃の怒りが凄まじくて、マリアローズを王族籍から抜く処分で落ち着きそうだということだった。だが妊娠を伝えたら、また荒れるだろうな。」
 

一波乱あるのは確実か。


「皇太子の子供は確か一人でしたね。」

「結婚一年後に皇女が一人。しかし、その後は何年もできていない。側妃は体を壊して実家に戻った。つまり、マリアローズとの子が男だったら皇国の跡継ぎということになる。」

 
そんな子供をお腹に宿していながら、ジャレッドと交わっていたのか。
気づいていたのなら、マリアローズのすることは無茶苦茶だ。
  
 
「おそらく、出産まで隔離することになるだろう。ここか、王宮か。」
 

皇太子はマリアローズを側妃にするわけではなく子供を引き取るだけのつもりか。
皇国は正妃以外の子供の母親が必ずしも側妃になるわけではない。
過去には平民が産んだ皇帝の子供だけ引き取られたこともある。

皇族の血筋を引いているということが重要な国だ。


「ここだと皇国の監視はつくのですか?」

「おそらくは。妃から守る必要があると皇太子は考えるだろう。」


マリアローズの妊娠を知った妃が堕胎を仕組んだり、男の子が産まれれば暗殺したりする可能性があるらしい。
だが、皇国は男しか国王になれない国だ。
妃の産んだ皇女は女王にはなれないというのに。

ジャレッドのそんな心の内を読んだように公爵が言った。


「妃の父親が中心となって、皇女でも国王になれるよう動いているんだ。」

「なるほど。それは危険ですね。」


ならば女の子が産まれても危険だろう。
しかし、どちらが産まれても我が国の王子殿下と異父兄弟になる子なのだから、国同士の繋がりは強くなる。

つまり、産まれた子が皇国の宮殿に入ってしまえば妃は手を出しにくくなるし、何かしたら妃の犯行だと丸わかりであるため、妃としてはこの国で亡き者にしたいだろう。

無事に子を誕生させるために隔離することがマリアローズを守ることでもある。


「ジャレッド、マリアローズの腹の子に万が一のことがあってはならない。もう相手をするな。」

「わかりました。」


たとえ産まれるまでの間だけでも、気が楽になる。

隔離先がこの屋敷でなければもっといいのだが。

 

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