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57.
『私が出て行ってからあなたは何度マリアローズ様を抱いたの?』
リリーベルのその言葉は、一瞬ジャレッドの息を止めた。
誤魔化すことはできる。
だが、彼女が求めているのは優しい嘘ではなく事実なのだとその目が言っていた。
「……わからない。数えて、いない。」
十回なんてもんじゃない。
毎晩ではないにしても、約二か月の間、二日に一度は抱いていたのではないか。
「つまり、数えきれないほど抱いたということよね。……ここで?」
リリーベルが指さしたのは、夫婦の寝室だ。
「いや、違う。昔の僕の部屋だ。」
「あなたが誘ったことは?」
「ない。」
「どんな風に抱いたの?優しく?激しく?」
「どうしてそんなことを聞きたいんだ?」
「いいから、答えて。」
「……彼女に任せていたらなかなか終わらない。だから、早く終わらせるために激しくしていた。」
マリアローズがジャレッドのモノを硬くして跨って腰を振るが、それだけでジャレッドはイケない。
そのため、結局はジャレッドが押し倒したり後ろから攻めてマリアローズを絶頂に導く必要があった。
「そう。つまり、お互いが満足するまでってことね。」
「ああ。」
マリアローズはジャレッドがナカに出すまで許さなかったため、彼女の絶頂に合わせていた。
「マリアローズ様はジャレッド様の初めての相手なのよね?」
「っどうしてそれを!?」
嫁いだマリアローズといつ交わったか。
それは当事者以外では、公爵とマーカスしか知らないはずだ。
「マリアローズ様が教えてくださったわ。」
「姉上が……何を考えているんだ。信じられない。」
「王太子妃殿下が不貞だなんて。前代未聞よね。」
ふふっとリリーベルは笑うが、それは嘲笑のようでもあった。
「マリアローズ様はね、私があなたの婚約者になった時から何度も言っていたわ。『ジャレッドの初恋はわたくしなの。彼はわたくしに夢中なのよ。あなたはわたくしの身代わり。わたくしのようになれてもジャレッドが見ているのはわたくしなのよ。可哀想にね』って。」
「そんなことを……」
当時ならその通りだと頷いただろう。
だが、今聞けばそれは悪意でしかない。
リリーベルはジャレッドに愛されないのだということを植え付けている言葉だ。
「違うっ!僕はリリーベルを愛している。身代わりなんかじゃない。」
「わかっているわ。あなたはあの家庭教師をクビにしてくれた。あの辺りから私自身を見てくれているって。マリアローズ様のようにならなくていいって思ってくれたのよね?
逆に私が『マリアローズ様なら……』って言うと困った顔になったもの。」
確かにそうだ。
マリアローズのようになれと言っていたのに、ならなくていいと言えなくて困った頃があった。
リリーベルはちゃんと見ていてくれたのだな。
それなのに、段々と成長していく彼女を直視できなくなっていったのは自分の方だ。
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