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ジャレッドはリリーベルとの離婚を回避できたと思いホッとしていると、リリーベルが言った。
「もう一度、約束をしてください。二度と不貞はしないことを。」
「もちろんだ。今度こそ約束する。」
「私がいない夜会でも誰かが見ているのでごまかせませんからね。」
「わかっている。そんなつもりはない。」
リリーベルは出産を控え、しばらく社交を控えていたし、産後もしばらくは顔を出せないため不安なのだろう。
「男性は上手く遊んでいるつもりのようだけど、意地の悪い女性は多いのよ?あなたと閨を共にしたことのある夫人方は結婚前の私にご親切にも逢瀬を匂わせてきたり、結婚後は妊娠中の相手は任せてほしいと言ってきたりするの。」
「なっ!?」
結婚前、未婚の令嬢を相手にすれば愛人にしろと言われそうだから、後腐れのない既婚者や未亡人と関係を持ってきた。
まさか、年若いリリーベルにそんなことを言うとは大人気ないにも程がある。
マリアローズにしても夫人方にしても、幸せな結婚をするのは許さないといった嫉妬と悪意を感じる。
「だから、万が一、不貞が発覚した場合はあなたのモノを不能にしようと思うの。」
「え!?いや、ちょっとそれは……」
勘弁してほしい。
リリーベルと繋がれなくなるじゃないか。
もう不要なのか?
「不貞をしなければいいだけの話よ?それと、不能になったあなたの目の前で私が他の男性と交わることにしようかしら。何度も私を裏切るなら、私もしてもいいと思わない?」
目の前で、リリーベルが他の男に抱かれる?
嫌だ!そんなこと、想像もしたくない。
「もう二度と、リリーベル以外の女性と関係を持たないと誓う!!」
リリーベルの肩を掴み、目を見てそう宣言すると、彼女はジャレッドが見惚れるような美しい笑顔を見せた。
「信じているわ。」
そう言って、顔をジャレッドの胸に寄せてきた。
張り出したお腹があるため、きつく抱きしめられないが、リリーベルがこの手の中に戻ってきてくれて歓喜する思いだった。
ようやく、以前の暮らしに戻れる。
愛する妻と、可愛いサフィル、もうすぐ産まれる子供。
公爵は近々引退する。
マリアローズが戻ってくることはない。
ジャレッドとリリーベルの幸せはもう誰にも邪魔されることはないだろう。
9歳で公爵家に来た時、初恋でこんなに長く苦しむことになるとは思いもしていなかった。
思えば、マリアローズも初恋に苦しんでいたのだろう。
彼女の場合、恋した相手には妻子がおり、ましてや叔父だったのだから。
結局、彼女はジャレッドを父の身代わりにしていたにすぎない。
そして、マリアローズはジャレッドにも同じようなことをしようとした。
リリーベルを自分の身代わりにしようと。
しかし、ジャレッドはリリーベル本人を愛した。
そこはマリアローズの思惑から外れたに違いない。
ジャレッドは自分を思い続けると思い込んでいたはずだから。
マリアローズはリリーベルに負けたと思い、ジャレッドと引き離そうとしたのだ。
しかし、結果は元通り。
いや、ジャレッドとリリーベルの絆は強く結び直された。
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