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しおりを挟むリズを屋敷の奥まで入れてしまうと面倒なので、玄関横の待機部屋で別れ話をして金を渡すつもりで玄関に向かっていたティムは、扉が開いて入ってきたのがリズであることに間違いないとわかった。
しかし、その後すぐに驚きのあまり、目を見開いた出来事があった。
それは………リズの後ろから子供の泣き声が聞こえてきたからだ。
「あ、ティム。久しぶりー。連絡をくれないから来ちゃった。なんか、前よりカッコ良くなったね。
もー、待ってる間もずっと背負ってて重かったわ。
この子、ティムの子よ。リムって言うの。リズとティムの一字ずつから取ってつけたの。
男の子よ。可愛いでしょ?」
玄関ホールはシーンと静まりかえった。
「……え?俺の、子供なの?」
「そうよ?ティムが王都に向かう前の晩に何度も繋がったでしょ?
その時に出来たみたいなの。
気に喰わなかったらすぐに帰ってくるーって言ってたのに帰って来ないし。
待ってる間にお腹が大きくなっちゃって、長距離の移動ができなくなって。
出産して、しばらくは大変だったから動けなかったし。
リムはよく寝る子だし王都に行きたいなら連れて行ってあげるって幌馬車に乗せてもらったの。
疲れたよー。ここに泊まっていいよね?」
「……は、……え?……ええ?!」
ティムの頭が混乱している中、足音が聞こえたと思ったすぐ後に声がした。
「ティム様、お取込み中のようなので、今日はこれで失礼させていただきますね。」
サリューシアだった。
伯爵に呼び出されたのは、2人でお茶を飲みながら話をしている途中だったのだ。
すぐに戻るつもりで待ってもらっていたが、帰宅する時間になっていたようだ。
「あ、あの、サリューシア嬢。えっと、これはあの………」
「……それはまた後日、ブルーエ家が話し合われた後に伺いますわ。失礼します。」
サリューシアは、玄関近くにいるリズにも会釈をして帰って行った。
玄関の騒ぎを聞きつけた伯爵が何事かと駆けつけた時には、リムの大泣きが玄関ホールに響き渡っていた。
リズとリムには客室で休んでもらい、伯爵夫妻とティムは話し合っていた。
「お前の子供で間違いないのか?」
「おそらく?あの子供の顔や大きさからいっても嘘ではないと思います。」
リズもティムも、あの頃はまだ15歳で、お互いに体の関係になったのが初めて同士だった。
ティムは母親が亡くなったばかりで家に一人だったから、恋人になったリズとは半同棲のような形で3か月ほど暮らしていたのだ。
平民が初めて体の関係を持つ年齢としては標準くらいで、早い子では13歳、遅い子でも18歳で8割方の平民が男女共に経験を終えているのだ。
結婚時に初めてでないことも普通にある。
平民は貴族よりも、その辺は自由だ。
すぐに帰って来るかもしれないと俺が言っていたから、リズもすぐに他の男に抱かれたりはしていないはずだ。
早ければひと月後、遅くともふた月後には妊娠には気づいただろうし。
「サリューシア嬢にも聞かれていたとは。
結婚前に庶子がいることを承知してもらわねばならん。
結婚後に発覚しておれば、まだ気は楽だったのだがな。」
「いいではないですか。政略結婚なのです。彼女も承知するでしょう。
いっそのこと、あのリムという子をサリューシア嬢にも認知してもらえばどうでしょう?」
伯爵夫人の言ったことに、伯爵は驚いていた。
サリューシアに認知してもらうということは、庶子ではなく嫡子扱いにするということだという。
しかもリムは男の子なので、跡継ぎになれてしまうらしい。
伯爵夫人の意図が伯爵にもティムにもわからなかった。
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