私の婚約者は誰?

しゃーりん

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リュージュ伯爵家にやってきたライラの父は、応接室に通された。

「マロリー伯爵、ご足労いただき申し訳ない。
 ケントは正式に廃籍することにした。
 学園の最終試験を受けて卒業しないと跡取りにはなれない。
 この時点で失踪するのだから覚悟の上のはずだ。
 自動的にライラ嬢との婚約はなかったことになる。
 慰謝料については…」

「リュージュ伯爵、すみませんがこちらの話を聞いていただきたい。」

「あぁ、すみません。どうぞ。」

ライラの父は、昨日、伯爵が帰った後にライラに話をしたところから今日の先程までの話を説明した。

「……というわけで、今のライラの中ではあなたが婚約者であり5ヶ月後の結婚を楽しみにしています。」

「……は???私が?」

「あなたとの結婚を否定することも、別の婚約者をあてがうことも今のライラは受け入れません。
 来月の最終試験が終わるまでは、こちらに押しかけることはないと思いますが、それが終わると…
 この伯爵家を自分の過ごしやすいように変える気でいます。…女主人として。
 ですので、このひと月の間に記憶が戻れば良いのですが、戻らない場合にも備えねばなりません。」

テオドールは頭を抱えた。ライラの父にもその気持ちはよくわかる。

執事とケント付きだった侍従と侍女を呼び、改めて今までのケントとライラの様子を確認した。

「気づいたことや、二人の様子、…一緒に逃げたメイドとの関わり、知っていることを話してくれ。」

三人は順に話し始めた。

「姉と弟?」

「母親と息子?」

「教師と生徒?」

…婚約中の関係に思えない言葉だ。「…他には?」

「メイドはケント様が連れてきたようです。前の仕事が辛そうだったらしく。」

「始めは完全に裏方のメイドだったのですが、様子が気になるようでしたので多少接点のある仕事もしてました。」

「ケント様とライラ様が一緒にいるところをジッと見てました。」

「…わかった。仕事に戻っていい。」




「ライラは政略結婚の相手としか見てなかったのでしょうかね。愛や恋を育む気がなかった?」

「ケントもそのつもりだったが、恋する相手を見つけてしまったということでしょうね。」

「ライラの記憶が戻らない限り、憶測になってしまいますがね。
 とりあえず、ひと月様子を見ます。
 ケント君の廃籍については、記憶を失う前のライラがケント君を慕っていたのなら保留も考えました…
 最終試験までに戻ってくるならば、婚約の継続もあり得ると。
 ですが、今はもう何も言うことはありません。お任せします。」

「わかりました。ライラ嬢の記憶に変化があれば知らせていただきたい。」

「ええ。ではまた。」 

ライラの父は伯爵邸を後にした。




2日後、頭の腫れが引いたライラは学園へ行った。
その時は、まだ今までと変わりはなかった。
だが2週間経つ間に、ケントが長期に休んでいることが話題になり退学扱いのようだと聞こえ始めた。
それは2学年下のライラの周囲にも伝わり始め……

「ライラ様?ケント様の噂は事実ですか?」

我慢できなくなったクラスメイトがライラに直撃した。

「噂?ですか?私に関係あるのですか?」

「関係って…婚約者様のことですよね?ご存知ないのですか?長期間休んでるって。」

「婚約者?私の婚約者はテオドール様ですわよ?」

「テオドール様?え?どちらの?」

「リュージュ伯爵家当主のテオドール様です。」

「ええ?!ケント様ではなくご当主様が婚約者だったのですか?でもお歳が随分離れて…」

「歳なんて気にしませんわ。私はテオドール様をお慕いしておりますもの。」

ポッと頬を染めて幸せそうに語るライラを見て、周りは自分たちが勘違いしていたのだと思った。
このことがライラのクラスから学年、さらに学園中に密かに知れ渡り、当然、子供たちは親へと報告する。
親たちは、信じられない思いで聞いていたが、何故か事実のように噂が上書きされた。

・伯爵が再婚しなかったのは、ライラを見初め、成長を待っていた
・伯爵は、ケントが実子ではないことに気付いたから時期を待って廃籍した
・ケントをカムフラージュにしていた


など、いかにもな噂が時間の経過と共にライラの両親とリュージュ伯爵の耳にも届いてしまった。




 
 
 
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