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ディーゼルは、妻アイリスが結婚する前に従えていた護衛騎士エリオットについて調べさせた。
すると公爵家の騎士という高給職を辞めて、今は王都の街を巡回する騎士をしているという。
そして、エリオットは必ず毎月第一と第三水曜日は休日にしているらしい。
アイリスとの密会のためだろう。
しかし、驚いたことに、他の休日は別の女と過ごしていた。
エリオットはアイリスに一途というわけではないらしい。
アイリスもディーゼルという夫がいながら、エリオットと不貞をしている。
アイリスは愛よりも地位と金を選び、ディーゼルと結婚したが、やはり愛も捨てられないとエリオットと関係を持ち始めたのかと思っていたが、二人の関係は思ったほど純粋なものではなかったのかもしれない。
ディーゼルに言えるのは、二人は結婚前から関係を持っていたわけではないということだ。
アイリスは純潔だったから。
しかし、アイリスとエリオットがキスをしている現場は見たことがある。
だからてっきり体の関係もあるのかと思っていた。
あんな貞操観念の緩そうな女を妻にしなければならないのか、とイライラしていた時期にベルと出会ったのだ。
ベルとの会話は楽しかった。癒された。
また会いたいと思ったほど。
だがそれは無理だった。
ひと月後にはアイリスと結婚しなければならないから。
断腸の思いでベルに別れを告げようとしたのに、彼女に誘われた。
別の女だったら断った。
ベルの初めてを他の男に譲るなんてことはできなかった。
一度きりしかない時間を大切に、丁寧に、隅から隅まで愛した。
子種をナカに放ったのも、してはいけないとわかっていたが、我慢できなかった。
ベルの中に、ディーゼルを刻みつけたい思いでいっぱいだった。
目覚めたら、ベルはいなかった。
感謝の手紙が残されていた。
ディーゼルは、ベルとの出会いを記憶の奥底に眠らせることにした。
そうしないと探してしまいそうだったからだ。
アイリスを妻にしなければならない。
それは決定事項である。
たとえ、アイリスを愛せなくとも。
子供が二人できるまで。
その時が来れば、ベルを探してみようか。
そんな思いで、記憶の奥底に眠らせていた。
しかし、子供二人どころか、一人もできないまま四年が経った。
アイリスは、自分は結婚前にどこも問題はないと診断されているため、子供ができないのはディーゼルに問題があるのだと言った。
だから、他の女に産ませようと思っても無駄だから養子を考えればいいと思う、と。
それでもできないとは限らないから諦めないでいようと言ったのだ。
あの言葉は何だったんだ?
アイリスとの子作りを諦めれば、ディーゼルが愛人を作り、愛人が妊娠したら、子供ができなかったのは自分のせいだとバレると思ったからか?
危うくアイリスのプライドのために、ヘミング侯爵家の直系が続かなくなるところだった。
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