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しおりを挟むディーゼルは、妻アイリスが元護衛騎士エリオットと密会する日にその屋敷を見張らせていた。
しかし、アイリスは現れたがエリオットは現れなかったらしい。
「どういうことだ?」
「わかりません。たまたま今日は本当にお茶会だった可能性もあります。」
毎度、密会しているわけではないということか。
二人が一緒に過ごしているだろうと思い込み、乗り込むようなことをしなくてよかった。
「不貞現場を押さえなければ意味はない。また次回にしよう。」
だが、二週間後の密会の日も、エリオットは現れなかったという。
「どういうことだ?二人は別れたのか?」
「実は、別の日の出入りも探ってみたのですが、屋敷に出入りするのは女性ばかりで。密会場所であれば男を一人も見ないのはおかしいと思います。本当にあの屋敷なのでしょうか?」
「アイリスが訪れているのだから、別の場所とは思えないが。」
まさか、こちらの動きを察知されたか、情報を漏らした者がいるのか?
別の者が思いついたように言う。
「ディーゼル様、次はエリオットの跡をつけてみてはどうでしょうか。ひょっとすると、あの屋敷は地下通路でどこかと繋がっているかもしれません。
屋敷の近辺までエリオットが向かい、姿を消すとしたら、その可能性が高いと思われます。」
「なるほど。地下通路か。何かあった時の避難通路として盛んだった時代があったな。」
男が日中に出入りしても違和感がないところが怪しいな。
娼館、連れ込み宿、酒飲み場、武器屋辺りか。
「あの屋敷の持ち主と同じ人物、もしくは同じ家名の店主がいればそこが怪しいだろうな。うまく見つかるかはわからないが、次までに時間があるから調査をしてみてくれ。」
「わかりました。」
調査の結果を聞いて、驚いた。
同じ家名で所有している建物が複数あったというのだ。
「このロドリゲス家というのは、かつては裕福だった貴族か商人かもしれないな。」
王都にこれだけの建物を所有できるとは、当時は羽振りが良かったのだろう。
いや、今でも経営できているのだから、それぞれの末裔の努力の末でもある。
「しかし、目星がつけられないな。やはりエリオットの跡をつけるしかないか。」
「一か所があの屋敷に繋がっているわけではないかもしれません。それぞれ、地下で繋がっている可能性もあります。」
「まさか、密会部屋に直通だったりしてな。」
冗談で言ったつもりだったが、その可能性もあると気づいた。
部屋に直通であれば、男は誰とも顔を合わせずに出入りできるだろう。
不貞していると気づかれたくない者にうってつけだ。
「エリオットは公爵家の騎士だった男だ。つけられていることに気づけば巻くかもしれない。ある程度、建物の方にも目星をつけて中で見張れる場所はそうしてくれ。」
「わかりました。」
今度こそ、密会現場を押さえてやる。
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