一夜の浮気から四年後

しゃーりん

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ベルとカイルが両親に受け入れられていると感じ、ディーゼルは屋敷に連れて来てよかったと思った。 
 
夕食を終え、ベルをカイルの眠る客室に送りながら彼女に言った。


「ベル、両親は君たちを歓迎してくれただろう?」

「……そうですね。少し、驚きました。」


ディーゼルも思った以上で驚いたが。


「両親にはちゃんと認めてもらう。だから、ベルも私の妻になることを真剣に考えてくれないか?」

「ディーゼル様は……、いえ何でも。」


何だ?何が聞きたい?


「言ってくれないか?」

「……ディーゼル様は浮気ができる方ですよね?ごめんなさい、誘った私が言うのもおかしいですけれど。」 
 

つまり、浮気する男は嫌、だということか?

 
「説得力はないかもしれないが、浮気はしない。前の妻と結婚していた間も、一度もない。
結婚前のベルとの一夜は、いつもであれば断っていた。だがあの日、私は君に惚れたのだろう。君の初めての相手を他の誰かに渡したくなかった。君の記憶に残りたかったんだ。」

「私に惚れて……?あなたの子をまた産めるかもしれないから妻にしたいのですよね?」

「いや、それだけじゃない。ベルにそばにいてほしい。愛し合える関係になりたい。」
 

ベルは驚いていた。

そう言えば、ベルのことをどう思っているかを話したことはなかった。
カイルと一緒にいたいがために、仕方なく求婚していると思われていたのかもしれない。
 

「私が結婚したいのはベルだ。また他の女性と結婚するくらいなら独身でいる。」


また政略結婚するくらいなら、カイルを認知して独り身のまま過ごす方がいい。
ベルも、愛人ではなく恋人なら受け入れてくれるか?

だが、やはり結婚して毎日を一緒に過ごしたいと思う。


「少し考えていいから、返事がほしい。今日はゆっくり休んでくれ。」

「ありがとう。おやすみなさい。」
 

ベルは驚いたまま、部屋へと入っていった。

思いに気づかれていなかったようだから、もう少し積極的に動いた方がいいかもしれないと思った。 





ディーゼルが部屋に戻り、ベッドに入ろうとした頃にベルの家を見張っていた者から報告が来た。


「は……?玄関扉を破壊?階段から転落?」
 

四人の侵入者が玄関をノックすることなく、いきなり扉を破壊して中に入り、『リザベル、愚かで恥ずかしい妹よ、どこだ?出て来い!!』と一人が叫び、二人で階段を上って行った。 

二階で待機していたヘミング侯爵家の騎士が侵入者を剣で応戦し、一人がよろけてもう一人にぶつかり、二人で階段から転落した。
 
落ちてきた二人に下にいた一人が驚き、壁際まで後ずさると壁にかけてあった絵画にぶつかって倒れ、壁掛けから外れた絵画の額縁で怪我をした。
 
もう一人は一階を調べており、無傷で捕縛。

そんな報告だった。


それは父にも報告されていた。


「妹、と口にしたのであればオックス伯爵本人かと思われます。おそらく、一番の重傷者が。」

「ふっ。面白いな。厄介な男に身内面されると面倒だ。リザベルに近づけないようにするか。」

「ありがとうございます。」


そうして、ディーゼルは父と怪我人が収容された場所に向かったのだ。

愚かなのはどっちだ。
オックス伯爵夫妻は、子爵であるベルを誘拐するつもりで侵入したという重い罪で貴族の身分を剥奪され、怪我が完治すれば牢に入れられることになった。


 
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