38 / 46
38.
しおりを挟むベルとカイルが両親に受け入れられていると感じ、ディーゼルは屋敷に連れて来てよかったと思った。
夕食を終え、ベルをカイルの眠る客室に送りながら彼女に言った。
「ベル、両親は君たちを歓迎してくれただろう?」
「……そうですね。少し、驚きました。」
ディーゼルも思った以上で驚いたが。
「両親にはちゃんと認めてもらう。だから、ベルも私の妻になることを真剣に考えてくれないか?」
「ディーゼル様は……、いえ何でも。」
何だ?何が聞きたい?
「言ってくれないか?」
「……ディーゼル様は浮気ができる方ですよね?ごめんなさい、誘った私が言うのもおかしいですけれど。」
つまり、浮気する男は嫌、だということか?
「説得力はないかもしれないが、浮気はしない。前の妻と結婚していた間も、一度もない。
結婚前のベルとの一夜は、いつもであれば断っていた。だがあの日、私は君に惚れたのだろう。君の初めての相手を他の誰かに渡したくなかった。君の記憶に残りたかったんだ。」
「私に惚れて……?あなたの子をまた産めるかもしれないから妻にしたいのですよね?」
「いや、それだけじゃない。ベルにそばにいてほしい。愛し合える関係になりたい。」
ベルは驚いていた。
そう言えば、ベルのことをどう思っているかを話したことはなかった。
カイルと一緒にいたいがために、仕方なく求婚していると思われていたのかもしれない。
「私が結婚したいのはベルだ。また他の女性と結婚するくらいなら独身でいる。」
また政略結婚するくらいなら、カイルを認知して独り身のまま過ごす方がいい。
ベルも、愛人ではなく恋人なら受け入れてくれるか?
だが、やはり結婚して毎日を一緒に過ごしたいと思う。
「少し考えていいから、返事がほしい。今日はゆっくり休んでくれ。」
「ありがとう。おやすみなさい。」
ベルは驚いたまま、部屋へと入っていった。
思いに気づかれていなかったようだから、もう少し積極的に動いた方がいいかもしれないと思った。
ディーゼルが部屋に戻り、ベッドに入ろうとした頃にベルの家を見張っていた者から報告が来た。
「は……?玄関扉を破壊?階段から転落?」
四人の侵入者が玄関をノックすることなく、いきなり扉を破壊して中に入り、『リザベル、愚かで恥ずかしい妹よ、どこだ?出て来い!!』と一人が叫び、二人で階段を上って行った。
二階で待機していたヘミング侯爵家の騎士が侵入者を剣で応戦し、一人がよろけてもう一人にぶつかり、二人で階段から転落した。
落ちてきた二人に下にいた一人が驚き、壁際まで後ずさると壁にかけてあった絵画にぶつかって倒れ、壁掛けから外れた絵画の額縁で怪我をした。
もう一人は一階を調べており、無傷で捕縛。
そんな報告だった。
それは父にも報告されていた。
「妹、と口にしたのであればオックス伯爵本人かと思われます。おそらく、一番の重傷者が。」
「ふっ。面白いな。厄介な男に身内面されると面倒だ。リザベルに近づけないようにするか。」
「ありがとうございます。」
そうして、ディーゼルは父と怪我人が収容された場所に向かったのだ。
愚かなのはどっちだ。
オックス伯爵夫妻は、子爵であるベルを誘拐するつもりで侵入したという重い罪で貴族の身分を剥奪され、怪我が完治すれば牢に入れられることになった。
1,415
あなたにおすすめの小説
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる