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しおりを挟むオックス伯爵夫妻が罪を犯して身分剥奪され、ベルの身が安全になったと思えば別の問題が浮上した。
「ベルがオックス伯爵家に復籍することに?」
「ああ。リザベル嬢はデリックから冷遇されて追い出されたのだと認められたようだ。まぁ、オックス伯爵家を継ぐ一番の血縁が彼女だからな。」
ベルがオックス伯爵になれば領地を持つ伯爵となるため、同じく領地を持ち次期ヘミング侯爵となるディーゼルとは結婚できない。
跡継ぎ同士が結婚できないのと同様と見做されるからだ。
これが結婚後であれば、ベルはオックス伯爵でありながらディーゼルの妻でいられたのだ。
「今、入籍すればどうなりますか?」
「それは無理だ。もう手続きに入っているから受理されるはずがない。」
ディーゼルは眩暈がした。
先を予想して、万が一に備えて入籍をしておけばよかった。
「だが、方法はある。リザベル嬢が信頼できる親族に爵位を譲ればいい。」
そうか!
だがそのためには、伯爵になるよりもディーゼルの妻になりたいと思ってもらわなければならない。
以前、告白をした返事はまだベルから聞けていなかった。
しかし、先延ばしにはもうできない。
両親とディーゼル、そしてベルがここにいた。
口を開いたのは父だ。
「リザベル嬢、君はオックス伯爵家に復籍することになった。」
「私が?叔父が伯爵になるのではないのですか?」
父親が亡くなってから、実質、オックス伯爵領を管理しているのは領地にいる叔父のはずだという。
22歳で伯爵となったデリックはずっと王都にいて書類にサインをしていただけらしい。
「それは、君が指名することで可能になる。成人している君を押しのけて親族が名乗ることはできない。」
ベルはデリックに代わって叔父がオックス伯爵になると思っていたようだ。
ベルの復籍がなければ、そうなっていたのだろう。
「そこで、君には二つの選択肢がある。
一つ目は、君が伯爵になり結婚し、子をもうける。カイルがいるから独身でいようというのは無理だろう。そしてカイルはどちらかの家が引き取ることになる。
二つ目は、親族に伯爵になってもらい、君は養子にしてもらう。つまり、オックス伯爵令嬢になる。
その身分でディーゼルに嫁いでくれることが一番望ましい。」
以前は父の二択をベルは拒否したことを思い出した。
ベルが出した三つ目の選択肢を、彼女は覚えてくれているだろうか。
『奥様と離婚して、私を妻にしてください。』と言ったことを。
「マシェーリ子爵の身分のままでは、ディーゼル様の妻にはできないという意味でしょうか?」
そうか。ベルは次の伯爵を指名した後、自分はマシェーリ子爵の身分に戻ることもできる。
これは三つ目の選択肢だ。
それが彼女の望みということか?
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