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41.
オックス伯爵領にいたベルの叔父夫妻が王都の屋敷に到着したとの連絡があった。
数日後にでも手続きをすることになる。
ベルは既にオックス伯爵家の令嬢に戻っており、不在の伯爵位は前任者から三か月以内に決める必要がある。
ベルがなるか、誰かを指名するか。で、ベルは叔父を指名する。
ベルは学園の卒業資格がないため、領地のある爵位を継げないからだ。
その手続きと同時にベルは叔父の養子になるため、オックス伯爵令嬢のままである。
その後、オックス伯爵令嬢のベルと、ヘミング侯爵令息のディーゼルが入籍し、同時にカイルもディーゼルの嫡子として認知する。
ここまでが一連の流れだ。
それは、誰にとっても望ましいことだ。
しかし、一つだけ、ベルには伝えていないことがある。
それを言わないままで、後でベルが知って後悔しないだろうか。
ディーゼルは本当にこのまま結婚してしまっていいものかと悩んだ結果、ベルに話すことにした。
「ベル、君の勘違いを一つ気づかない振りをして結婚しようとしていたことを反省している。」
「勘違い?何のことでしょう。」
「爵位のことだ。領地を持っている貴族の爵位は確かに学園の卒業資格がいるが、それは後からでも資格を得ることができる。今のベルでも、何項目かの領地経営に関する試験に合格すれば資格を得ることができるんだ。」
「…………」
「君は伯爵になれた。それなのに、卒業していないから伯爵になれないという君の言葉が間違いだと否定しなかった。伯爵になるという選択肢を奪ってしまったんだ。」
ベルが伯爵になることを選べば、ディーゼルと結婚できないから言わなかった。
だが、言わないのはやはり卑怯だ。
「知っていましたよ?」
「…………え?」
「祖母が教えてくれました。学園に入学できなかった時に。もしも兄が問題を起こして伯爵の座を退くことになれば私が継ぐことになるかもしれないから、その時は別の方法で卒業資格を得ればいい、と。」
「知って、いた?」
「知らないふりをしていたんです。選択肢を一つ減らすために。」
残る選択肢は、オックス伯爵令嬢かマシェーリ子爵のどちらでディーゼルに嫁ぐか、ということだった。
つまり、ベルは結婚してくれる気でいたということか?
「伯爵になんてなれば、絵が描けないじゃないですか。カイルも手放したくないし。」
………そういう理由か。だよな。でも、それでもいい。
「画家であることも、結婚するまで隠そうかと思っていました。」
「ん?どういうことだ?まるで、私と結婚したかったように聞こえるが。」
絵を描きたいからあまり社交する気はないと言えば、両親が結婚に反対する可能性もあった。
だから内緒にして、結婚してから画家だというつもりでいた、というのであれば結婚したかったということになる。
だが、結局話したということは、結婚したくなかった?
どっちなんだ?
「ズルい言い方ばかりですね。ごめんなさい。」
ベルはそう言って苦笑した。
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