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かつて逃げ出したオリオールの屋敷。
ローレンスはここに戻ってきた。
「お帰りなさいませ、ローレンス様。」
そう声をかけてきたのは、領地の屋敷にいた執事の息子ではなかったか。
「君は、オルフ、だったか?」
ローレンスよりも10歳近く年上だったように思う。
「はい。オリオール侯爵領の屋敷で執事として働いておりましたが、この度、大旦那様よりこちらの執事にと任命されました。」
お祖父上様からか。
オリオールの執事は王都と領地にそれぞれいるが、異動があるわけではなかった。
領地の執事はここ何代かは世襲制で続いていたようだが、王都では違う。
王都の執事が補佐も含めて解雇になったため、事情を知っている領地の者が派遣されたのだろう。
メロディーナと眠ってしまった子供たちは先に部屋に入って休んでもらった。
ローレンスはオルフから話を聞くために執務室へと向かった。
「では領地の屋敷の方は誰に任せているんだ?」
「私の父が。補佐もおりますし、息子も見習いとして学んでおりますのでご心配には及びません。」
「そうか。……祖父母は健勝なのか?」
もう随分と高齢になっている。
祖母の体を気遣って、ずっと領地で暮らしている2人。
「大奥様はこの1年ほど床に就いておられます。」
「そうか。」
ローレンスが戻る連絡をしていても祖父は王都には来ない。
祖父にとってはどうでもいいことなのだろう。
近々、領地にも向かうつもりでいるが、先に国王陛下に謁見、そしてオリオール侯爵の襲名、メロディーナと子供たちの入籍をしておかなければならないために王都へとやってきたのだ。
「3日後に国王陛下に謁見することになっている。仕立てが間に合わなければ既製服でも構わないから手配してほしい。妻と子供たちの分もだ。」
平民として暮らしてきたローレンスたちが国王陛下に謁見できるような服は持っていない。
辺境伯領で少し揃えたが、それはあくまでも馬車移動する貴族に楽な服であって、登城するのに相応しい服ではない。
「勝手ながら何着かご用意させていただいております。微調整で済むかと。」
どうやらローレンスとメロディーナのサイズは、ジェイドと辺境伯の方から伝わっていたらしい。
何が必要か、周りが先回りしてくれていたようだ。
「そうか。それは助かる。」
その後は、現在のオリオール侯爵家の状況や使用人のことなどを一通り聞いて休むことにした。
湯浴みを済ませ、寝室に向かうとメロディーナと子供たちがベッドにいる。
子供たちが目を覚まして知らない場所だと泣かないように、一緒に眠ることにしたのだ。
「お疲れさま。問題なさそう?」
「ああ。オルフが上手く仕切ってくれていたようだ。
面白い話を聞いたよ。あの親子判定キットができたことで、夫の愛人の子を疑わしく思って調べたら夫の子供ではなかったと判明して跡継ぎが変わった貴族家があるんだって。今は調べる希望者が殺到中らしいよ。」
「まあ!夫婦仲が壊れそうね。」
「お互い、やましいところがなければ笑い話で済むさ。」
笑い話にならない貴族家が何件出るかはわからないが自業自得だ。
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