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一方、プリズムに興味津々で愛妾にしようとして打診を断られた王太子は、まさかもうコンラッドの弟がプリズムに手を出していたということに驚きを隠せなかった。

王太子は一度だけ、プリズムの顔を見たことがあった。 
社交デビューの時だ。
その年にデビューした令嬢の中でも群を抜いて美しかった。
視線を交わすことができないまま、彼女はあっという間に去っていた。
そばには婚約者であるコンラッドが威嚇するように張り付いていた。

ちょうど王太子妃が王子を産んだばかりの頃で、プリズムを側妃にするのは難しかった。

冗談交じりにコンラッドにも、

『彼女は私の妃になる方が嬉しいんじゃないか?』

と言ってみたが、鼻で笑うかのような嘲笑を返された。

『王太子妃様に王子様が産まれたばかりで何をおっしゃるのですか。
 側妃は王太子妃様との間に王子が誕生しなかった場合に選考を経て決定されるのです。
 妃とおっしゃいましたが、妃にはなれません。
 未婚の伯爵令嬢を妃ではなく愛妾に差し出す親なんていませんよ。
 それに私は何があっても婚約解消するつもりはありませんからね。』

警戒心を強めるきっかけになったのか、結婚式も身内だけで行い、その後もコンラッドは妊娠・出産を理由に全く社交場にプリズムを出さなかった。

溺愛の噂は誰もが知っていた。
プリズムを見たことがない令息やその親たちも、コンラッドの徹底ぶりに引くと同時に興味も増していく。

コンラッドが亡くならなければ、先日の夜会にプリズムを連れて来るはずだった。
その噂が広まり、プリズムを一目見ようと参加者がいつもより増えると思われていたほどに。

しかし、その機会はコンラッドの葬儀でベールを被ったプリズムを一目見るという状況に置き換わってしまったが。



子供がいなければ、実家に戻って再婚を考えるということになっていただろう。

しかし、既に男の子を出産しているプリズムがそのまま侯爵家に留まることは当然の権利である。
それに、ジュリアスがまだ未婚であったために婚約を解消して亡き兄の代わりに中継ぎになるという判断も間違ってはいない。
そして、ジュリアスが跡継ぎではないために結婚しても次期侯爵夫人にはなれないし子供も継げないとなると、妻となる女性はよほど無害だと判断されなければ受け入れられない。

それならば、まだ若く、美しく、魅力的な義姉と夫婦になることが侯爵家にとって一番いいことなのだ。

侯爵家がそう判断する前に、喪が明けていないとわかっていながらも愛妾になれと打診したのに。 

ジュリアスとプリズムの関係が愛妾を断るための偽装ではないかと思い、調査した結果は事実だった。

夫を亡くしたプリズムに寄り添い、慰める。
若い男女の距離が縮まれば、体で慰めることになるのは想像に難くない。
男の性であり、女の処世術だ。

プリズムとの関係が徐々に使用人にもバレて、学園が休みの前の晩などはジュリアスは朝までプリズムの部屋にいるし、結婚後の2人の部屋の改装も始まっているという。
 
王太子の愛妾にはできないし、他の男の第二夫人や愛人にもならない。

喪が明けたら婚約し、ジュリアスが卒業したら即結婚でプリズムはまた表舞台に出てくることなく侯爵家に囲われるということだ。


「コンラッドみたいに監禁はしないだろうが、ジュリアスもすぐに孕ませそうだな。
 姿を見ることができるのは、まだ先になりそうだ。」
 
 
王太子は諦めと共に深くため息をついた。

 




 
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