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初恋同士で、運命の再会を経ての結婚。

周りからはそう思われているため、そのように振る舞う必要があると知って…… 

恥ずかしい。

そう思ってしまった。

面倒くさい、とか、嫌だ、とか、否定的な感情ではなかった。

唐突な結婚話の裏を知り、オルビスの怪しさがなくなったせいだと思う。


「あの、もし王女様の帰国がなくなったとしても、この結婚はこのままですよね?」


もし婚約解消だなんてことになったら、私はこの国で生きていける?
あ、でもまだ顔を知られていないから別人として過ごせたりする?


「もちろん。王女は関係なく、結婚する。
 アミディアは私が唯一結婚したいと思った女性だ。昔も、今も。
 だから逃げるなよ?っていうか逃がさないよ。
 噂が本当になるように、遠慮なく私を好きになってくれ。
 こっちも遠慮なく口説いて迫るからな。」


アミディアの手を取り色気たっぷりに言われて指先に口づけられた。
アミディアは顔が真っ赤になっただろうと自分でもわかった。
胡乱な目で見ることをやめてしまえば、オルビスはすこぶる顔が良い男なのだ。
気づいていなかったわけではないけれど、そのことが余計に怪しく感じた原因だったから。
公爵令息で顔も良く、口もうまい。
こんな男性に口説くと言われ、しかも婚約者なのだから落ちない理由はないのだ。


「そう言えば、あの時、別れ際に言ったことを覚えてるか?」


別れ際。あの国での?………ん?まさか、次は唇にって言ったこと?

思い出してハッとオルビスの方を見ると、既に顔が目の前にあって唇が塞がれた。

こうして心の準備をする間もなく、アミディアのファーストキスは初恋?で昔、自分から求婚したと思われる今は婚約者となった男にじっくりと貪られた。
 


2日後に公爵家を訪れる時間を決めて、オルビスは帰っていった。



髪色のせいで、ただでさえ対人スキルの低いアミディアはもうほとんどオルビスに陥落したと言っていいと思う。
口説く必要などない。いや、口説いてほしくない。
恋愛スキルも低いアミディアには、オルビスは刺激が強すぎるから。
結婚までの5か月で、徐々に関係を進めていってほしい。

今日みたいなキスは、アミディアの中ではあと3か月は先であるべきなのだ。
結婚まであと少しの時間が待ち遠しくて、キスが深まる。
読んでいた恋愛小説の中ではそうなのだ。
それなのに、ファーストキスから濃厚で……

だけど、小説の中ではない現実の相手はアミディアよりも4歳年上で経験は豊富そうである。
過去の経験にとやかく言うつもりはないけれど、確かに初心者向けの恋愛に付き合うような男ではない。

学園に入学する前のサミールとの関係は、お互いに好き同士でも友人みたいなままごとのような恋愛だったので、頬にキスはされたことはあっても唇にはなかった。
通常は、心身共に成長が著しい学生の頃に唇のキスも経験し始めることが多いのだろうけれど、その期間は見事にサミールと過ごさなかったし、気持ちも冷めてしまったためにアミディアは男性との接触に慣れていない。

オルビスはそんなアミディアに気づきながらも、慣れるように強引に触れてくるタイプの人だと思う。

それが恥ずかしいと戸惑いながらも嬉しく思う自分にアミディアも気づいていた。 



 

 




 


 
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