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遊ぶ許可をもらいにきたハリソンが部屋を出て行った後、シェルリアは首を傾げて専属侍女のリコッタに聞いた。
「遊びに行くのに私の許可って必要なのかしら?」
「普通はバレないようにコッソリされることが多いと思いますが、シェルニア様の気持ちが変わらないか確認される意味もあって聞きに来られたのではないでしょうか。」
「私の気持ち?どういうこと?」
「シェルニア様がもし白い結婚をお止めになりたいとおっしゃれば、ハリソン様はその気持ちを受け入れるおつもりだったのでしょう。その時は他所ではなくシェルニア様と閨を共にされるおつもりで……」
「待って待って。閨を……?リコッタ、ハリソン様が言った遊びって何のこと?」
「一夜の遊びのことでございましょう?他所で欲を発散させてくるという意味ですが。」
シェルニアは驚いた。要するにハリソンが浮気をしてくることを自分が認めたということだ。
「そんなつもりじゃ……てっきり紳士倶楽部でカードゲームでもして遊ぶのかと。」
「ハリソン様は白い結婚を続けるのであれば、とおっしゃいました。話の流れから言えば、一夜の遊びで間違いないと思いますが。」
「……ハリソン様にはそんな関係の女性が前からいたってこと?愛人?」
「さあ?そこまでは。ただ、結婚してこの1年は遊んでいなかったということだと思われます。」
愛人がいたのであれば、1年間は体の関係はなかったということ。
貴族夫人や未亡人の中にもその場だけの関係として男女の仲に誘う女性もいると聞いたことがある。
娼婦を抱くことなど、一夜の遊びの典型的なものだ。
ハリソンの相手がどういう女なのかはわからないが、私という妻がいると知っているかもしれない。
そう思った途端、自分がハリソンの相手に馬鹿にされているように感じて怒りがこみ上げた。
「シェルニア様、もしもお嫌なのであればハリソン様を今なら止められると思いますが?」
今、部屋を出て行ったばかりだし、今日遊びに行くとも限らない。
私が、『やっぱり嫌』と言えば止めてくれる?
「ですが、その時は白い結婚ではなくなるということになります。」
「どうして?」
「シェルニア様は、妻としての務めを果たしていません。2年後に離婚すると決めていても、閨を共にすることは可能だと思います。ハリソン様は、シェルニア様が妻として閨事に応じるのであれば他所で欲を発散させることはないと言いに来られたのです。」
「つまり、ハリソン様の遊びを止めると私が応じることになるのね。」
シェルニアは考えた。だけど、出た結論は変わらなかった。
「私は愛していない人に抱かれるなんて嫌だわ。……男の人は平気なの?」
「どちらかと言えば男性の方が愛がなくとも抱けると思われます。ですが、政略結婚の場合は子作りは義務のようなものですので愛がなくとも営みはなされます。子作りのためだけでなく、お互いの欲の発散のためには愛は必ずしも必要ではございませんので。」
愛にこだわる自分は、貴族としての義務を果たしていないのだと感じた。
私という妻がいるのに、浮気をするのが許せない。
それは妻の義務を果たしているから言えることであって、今のシェルニアが言えることではない。
夜会でもよく、シェルニアは夫人方から聞かれる。
ハリソンは、やはりタフなのか、上手いのか、愛の言葉を囁くのか、貸してほしい。
意味がわからなくて笑って躱したけれど、閨でのことを聞かれていたのだと後で知った。
そんな、女性たちが興味津々な男性を夫にしているのに、シェルニアは知らないままなのだ。
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