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シェルニアは3つの気持ちの中で揺れ始めた。
1つ目は、愛していない男性と閨を共にしたくないこと
2つ目は、ハリソンの遊び相手に笑われている気がして浮気を止めるために白い結婚をやめること
3つ目は、誰もが羨む男と結婚したのに閨を共にしないままで後悔しないかということ
ハリソンが『遊ぶ』と言った日から、シェルニアはさりげなくハリソンの行動を見張っている。
だが、そんなに怪しい行動をしているようには見えない。
なのでシェルニアは、あれはハリソンがシェルニアを抱きたくて言ったことなのだろうと思った。
浮気してほしくないとシェルニアが言えば、白い結婚ではなく夫婦として閨を共にしようとハリソンは言うつもりだったのだ。
なのに、シェルニアは遊びを許した。ハリソンの目論見が外れたのだろう。
今のハリソンは、シェルニアが白い結婚をやめると言い出すのを待っているか、次なる手段でシェルニアをその気にさせようと企んでいる途中なのだ。
彼女の中ではそう決まり、気持ちが揺れていたことなど忘れてしまっていた。
それから更に半年と少し経った。
結婚生活は残り3か月ほどになっていた。
さすがに結婚してから1年半以上経つと子供が産めるのか心配の声も上がってきた。
シェルニアよりも後に結婚したカサンドラ妃殿下が先に妊娠し出産がそろそろなので、どうしても子供の話題になる。
ハリソンは第二夫人を探すべきでは?とも言われている。
そんなある夜中、何気なく目が覚めて廊下に出るとハリソンが戻ってきたところのようだった。
そのハリソンの匂いがいつもと違うと感じ、そして彼が色気を纏っているようにも感じた。
「どこに行っていたの?」
「君に言う必要、あるかな?」
馬鹿にされたように感じ、思わず声を荒げた。
「ふざけないでっ!あなた……」
口を手で塞がれて、ハリソンの部屋に連れ込まれた。
「何をするのよっ!」
「あんなところで大声出すなよ。喧嘩していたと噂になるぞ。」
確かにそうだった。だけど、自分のせいじゃない。ハリソンのせいだと思った。
「……いつもの匂いと違うわ。」
「どこに行っていたか知りたいんだったな。女を抱いてきた。その女の匂いだ。これでいいか?」
非常に生々しい告白に衝撃を受けた。彼は本当に浮気をしてきたのだ。
風呂にまで入ってきたのだろうか。髪がまだ濡れている気がする。乾かないほど近くで?
「あなた、私を抱けないからって他の女性を代わりにするなんて、汚らわしいわ。」
動揺して思わず出た言葉にマズいと思ったが、出た言葉は戻せない。違う言葉を探そうとしたけれど、その前にハリソンが言った。
「他の女性を代わりに?ハッ!何を自惚れているんだ?汚らわしい?別にそう思うなら思えばいい。
俺は健全な大人の男だからな。経験のない君には理解できるはずもない。」
「それなら……」
白い結婚を止めて私を抱いてほしい、その言葉を素直に口から出すべきだったが言えなかった。
「勘違いしないでほしいんだが、君に欲情する気持ちを他の女性で発散させているわけじゃない。
君に欲情したことはないよ。これはただ単に俺自身の性欲のせいだ。」
私に欲情したことがない?嘘だわ。私をその気にさせる企みなのね、これは。
「私は言わないわよ?白い結婚を止めたいだなんて。何を企んでも無駄よ。」
「……何も企んでいないが?」
「そんなはずないわ。今頃になってようやく遊びに行くだなんて、ずっと私が言うのを待ってたのでしょう?」
そんなに驚いて。図星なのでしょう?
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