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3.
しおりを挟む王都に着き、今回はサイモンの家に泊まらせてもらうことになり荷物を置いて休憩した。
その間に、サイモンは私を連れて王都にいると手紙を出したようだ。
結果、翌日に会うことになった。
向かったのは、ロレーヌ嬢の母親の実家であるエントス侯爵家。
ここにロレーヌ嬢は避難しているそうだ。
ま、お見合いみたいなものかな?とまだ軽く考えていた。
応接室に現れたのは、この家のエントス侯爵夫妻とキーレン侯爵夫妻とロレーヌ嬢。
…サイモンは別室で待っているので、こちらは自分一人だった。
挨拶を交わした後、すぐに本題に移った。
「ホイラン子爵、姪のロレーヌとの結婚を望んでくれていると思っていいのかな?」
エントス侯爵が切り出した。
私が望んでいるわけではないが、望んでいることにしなければいけないのだろう。
「はい。私は子爵と爵位は低いですし再婚にもなりますが、子供はおりません。
再婚を考えていた時に、今回のお話をいただきました。
ただ、暮らす場所は領地になります。
それにキーレン侯爵ご夫妻とロレーヌ嬢が納得していただければ。ということになりますが。」
「はっ!王都からいなくなった方がいいんだ。
学園を退学させられた不名誉な娘が王都をウロウロしていると迷惑だ。
ああ、持参金は出さないぞ。
もともと、修道院に入れるつもりだったんだ。
もうロレーヌに金を出す気はない。」
「……そうですか。
ロレーヌ嬢、婚約する前に子爵領をご覧になってから考えますか?」
ロレーヌ嬢に聞いたつもりが、キーレン侯爵から返事が返ってきた。
「なにを呑気なことを言っている?
婚約期間なんて必要ない。即、結婚だ。
キミがいつロレーヌを放り出そうが構わない。
子供を産ませてから離婚してもいいし、使用人でも、修道院に入れるのもいい。
ロレーヌが帰ってくる場所はもうない。
婚姻届を出して、すぐに王都から去れ!」
キーレン侯爵のサイン済の婚姻届をテーブルに叩きつけて、部屋から出て行ってしまった。
……え?今日、結婚するのか?
誰もがあ然としていた。
エントス侯爵がなんとか雰囲気を変えようと明るめの声を出して言った。
「えーっと。っほら!またキーレン侯爵に会う手間も省けるし、届を出すのもいいんじゃないか?
領地に行ってからお互いを知っていけばいいんだ。」
そうするしかないのだが……
「ロレーヌ嬢、結婚式とかは……」
勢いよく首を横に振られてしまった。
「しなくていいのか?」
勢いよく首を縦に振られてしまった。
母親であるキーレン侯爵夫人を伺って見ると、同じく頷いている。
「サイン……するか?」
またまた勢いよく首を縦に振ったので、逃げるわけにもいかずサインをしてロレーヌ嬢に渡した。
令嬢であるロレーヌの方は、保護責任者として父親のキーレン侯爵がサイン済。
私は既に子爵なので保護責任者はいないが、見届け人としてエントス侯爵もサインをした。
エントス侯爵が侍従に婚姻届を渡し、提出を頼んだ。
こうして顔合わせしたその日に、ロレーヌと結婚することになってしまった。
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