夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん

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ここ、アルデール王国は大陸の端に位置し三方が海に囲まれている。
唯一隣国に接している国境には、2/3が<魔の森>と呼ばれている強い結界で覆われた森があるため、
残り1/3の国境で行き来することになる。
隣国とは良い関係を築いているため、争いはない平和な国である。


ちなみに<魔の森>は、200年ほど昔に隣国の魔術師が森全体に結界を張ってくれたおかげで我が国の
森も恩恵を受けている。魔物が閉じ込められ、あと300年はもつ結界らしい……。ありがたい。

生活のあらゆる場面に魔石がある。
透明の魔石は、属性の魔力を込めることで色が変わる。

赤い魔石は火の魔力が込められており、触れると火がついて料理ができたり、明かりをつけられる。
青い魔石は水の魔力が込められており、触れると水が出て料理や風呂、水洗に役立つ。
黄色の魔石は土の魔力、緑の魔石は風の魔力、白の魔石は治癒の魔力が込められている。

魔力の効果が薄れると、だんだんと透明に戻るため、新しいのと交換する。
透明に戻った魔石は属性を込めて再利用される。便利だね…。


人口の70%は日常生活に困らない程度の魔力を持っているが、属性が発現されない。主に平民だ。

平民であっても属性が発現することがある。その場合は魔石に属性を込める仕事をする人が多い。
人口の5%ほどだ。


貴族は平民より魔力が多く、人口の1%ほどだ。そのため領地の災害時や騎士になる等、国のために
大きな魔力が生かされている。ほとんどの人が何らかの属性がある。


残りの24%はほぼ魔力を持たないが、魔石を持つことで普通に生活できる。主に平民だ。
この魔石は属性が込められる透明ではなく、黒である。どんな魔力でも込めると薄いグレーになる。

指輪やブレスレットに加工した魔石を持つことが多く、大きさと使用頻度によって持続時間は異なるが、
数日はもつ。

魔力が残り少なくなると黒っぽくなるので、家族や知り合い、なんなら通りすがりの人にお願いして
魔力を込めてもらったりする。その時間はわずか数秒~10秒程度。お手軽…。
紛失しても、教会で魔力の再確認をしたら新たな魔石をタダで貰える。貧乏人にも優しい…。




そんな王国の王城の一角にある王太子殿下の執務室をノックしたのが、リットン公爵令息のジーク。
もちろん、娘の婚約話をなかったことにするためである。


「ジークです。今よろしいでしょうか。」


中にいた侍従がドアを開けて入室を促した。許可が出たようだ。


「失礼します。あぁ、ルナリーゼ様もいらっしゃいましたか。」


王太子妃ルナリーゼがソファに座っていた。


「ごきげんよう、ジーク様。今日はお休みだとレオ様に聞いたところだったのだけど?」


ジークに言った後、王太子レオナルドを見た。


「どうしたんだ?急用か?」


「ええ。出来れば今すぐお二人に聞いていただきたいのですが…」


レオナルドは三人分のお茶を用意させた後、人払いをした。


「それで、何があった?」


「アダム王子とリリーベルの婚約話をなかったことにしていただきたいのです。」


「なぜ?まさかリリーちゃんが病気になったの?」


「いえ、そうではなく……確認したいのですが、夢に影響を及ぼす魔術や魔道具はありますか?」


「聞いたことがないな。何か関係があるのか?」


「実は……」


マリエルが見た夢の話をして、現実にならないよう、なかったことにしたいと伝えた。


「……レオ様。マリーはおそらく……」


「あぁ。そうだろうな。それにしてもアダムがひどいな……」


「夢にお心当たりがおありで?」


「この夢ではないが、そういった事例はいくつかある。
 夫人も交えて説明したいので、明日の朝、一緒に登城してくれないか?」


「わかりました。では失礼します。」


「仕事はしていかないのか?」


「今日はマリーのそばにいたいのです。それに今帰ると、3時のお茶を家族と過ごせる!」


ジークはそのまま退室し、残された王太子夫婦はダメージが大きかった。


「はぁ。ジークはほんとに家族を大事にしてるね。
 私達も公務も大事だが、もう少し家族で過ごせるように時間をつくろう。」


「そうね。アダムの不安すぎる将来がわかったことだし……
 まだ間に合うわ。アダムだけじゃなくてリアナも見てあげないと。
 あの子は王女として頑張りすぎてる気がするわ。
 極端な姉弟だわ…」


「母の体調が悪くなった時に引き受けた仕事をそのままにしてるんだろ?
 王妃としての仕事は母に返すことにして、母の個人的な慈善事業は実家に頼むか、後任を選んで
 もらうよう、言っておくよ。
 まぁ、王妃の仕事はあと数年で正式にルナリーゼの仕事になるんだけどね。」


「ありがとう。子供たちと過ごせる時間が増やせると嬉しいわ。」


この国では、王族・貴族ともに子供が小さいうちは親と過ごす時間を確保出来るよう、爵位の継承は
跡継ぎが30歳前後になることが多い。親が50歳、子が30歳、孫が10歳のいずれかの時点が推奨されている。
現在、国王が50歳、王太子が29歳、王女が9歳、王子が6歳であり、譲位は2年後に予定されている。





ジークが公爵邸に戻ると、庭に面したテラスでマリエルと子供たちがお茶とお菓子を食べ始めた
ところだった。


「おかえりなさい。早かったわね。スムーズに話が終わったのかしら?」


三人の頬にキスをして、空いているイスに腰掛けたジークが苦笑しながら言った。


「ただいま。スムーズ…というか心当たりの事例があるみたいなことを言われて、明日、君も一緒に
 登城して話をしたいそうだ。いいかな?」


「よくわからないけど、何がなんでも幸せな未来のために負けないわ!」


朝より元気になったマリエルを見てジークはホッとし、子供たちは何の勝負かと首を傾げていたが、
おいしいお菓子と紅茶を飲みながら、目の前の幸せを感じていた。




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