夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん

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≪婚約式3日前≫ 
 
 
次の日は、学園の入学式の出来事から書き出し始めた。

よく恋愛小説にありがちな、躓いて膝をついた令嬢に手を出して立ち上がらせる王子…
お互いに一目惚れしたかのように見つめ合う二人…
休憩時間にはいつも一緒…
そして…


「…なんなの、この嫌がらせの内容の無さ。項目だけはいろいろあるけれど…
 これって実際に起こったことじゃないから、その場面の夢の記憶がないってことじゃない?
 されたことを言い並べているのは令嬢だし、王子はそれを聞いて判断しただけ。
 どこにリリーがやったと思う根拠があるのかしら?
 まさか令嬢が言った、『アダム様には婚約者がいるのでしたよね?』=『リリーが犯人?』なの?!」


先入観はよくないと思いつつも湧き上がってくる推測に怒った後、涙が流れた。





しばらく心を落ち着かせていると、扉がノックされ返事をすると入って来たのはリリーベルだった。


「お母様、お茶の前にお兄様の剣の訓練を覗きに行きませんか?」


「ええ、いいわよ。あなたももう少ししたら訓練が始まるから興味があるのね。
 でもカイルの訓練とは内容が違うわよ?リリーは短剣の扱いと護身術の訓練ね。
 基本的には護衛が一緒にいるけど、万が一の時の為だから…」


「わかっています。
 でも、私はアダム様の婚約者になるんだから、アダム様を守れるように頑張りたいわ。」


「……誰かにそう言われたの?」


「いいえ?ご本の王族の方々は、騎士や側近に守られています。だから私も頑張ります!」


ニコニコと笑顔で答えるリリーベルに、夢の中で見た短剣を上手く使いこなす姿が重なった。


(剣術が上達したのは、アダム王子のためだったのね。上達し過ぎて嫌われたけど。)


アダム王子との婚約がこの先どういう結果になったとしても、リリーベルの頑張りは無駄になることは
ない。未来を絶対変えるのだから。


「焦ってはダメよ。ケガをしてしまうから。
 リリーの上達に合わせて指導してくださる先生の指示に従いましょうね。」


「はい!」


話しているうちに、訓練場に着いた。

カイルが指導されているのが見える。
あの子も…剣の筋が良いそうだ。だが、本人は騎士になる気はないらしい。

公爵家の跡取りになる予定だが、ジークのように王城で働くか、領地に役立つ事業を興すか…
ジークの父、子供たちの祖父は公爵としての仕事と興した事業の仕事で王都と領地を行ったり来たり
している。そろそろジークに公爵位を継承させるみたいだ。引退後は事業をどうするつもりなのか。

ジークは王城の仕事と公爵の仕事があるので、父の事業は責任者として判を押すだけにしたいらしい。
ならば、カイルが祖父の事業を継いで更に大きくすればよいという案もあるが、本人次第だ。

現地に信頼できる管理者が常駐しているので、そのまま管理者の後継も育ててもらいたい。

マリエルが管理する?責任を負わないアドバイスなら今でもしているが、義母に託された慈善事業と
公爵邸の管理で手一杯だ。何故かマリエルだけ既に公爵夫人の仕事をしている…。


リリーベルは目を輝かせて訓練を見ていたが、どうやらカイルの訓練が終わったようだ。
こちらに歩いてきたカイルに、お茶の用意をするので着替えたらテラスに来るように伝えた。




「カイル、剣の扱いがまた上手になったわね。
 体に合わせて長くなったのに、重そうになかったわ。力がついたのね。」


「そうですね。毎日、基本運動をしていたら体力がつきました。怠らずに頑張ります。」


「お兄様、かっこよかったわ。周りの騎士様たちも素敵だった。私も頑張るわ!」


剣の扱いはかっこよさを競うものではないが…実情を把握しているカイルとマリエルは苦笑した。
自分や誰を守るために剣を振るうには相手がいるのだ。…剣と流血は切り離せない。
リリーベルは頭が良い子だ。おそらく、訓練を始めて間もないころに気付くだろう。
夢の中では理解していたから、おそらく大丈夫だろう。

本当に頑張り屋の良い子たちだ。



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