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しおりを挟む翌朝、侍女に起こされて身支度を手伝ってもらい、部屋で朝食を食べた。もちろん一人でね。
お茶を飲んでいると、ギルバート様がやってきた。話をしてくれるのね。
「子供を一人産め。女主人の仕事はしなくていい。毎月、ある程度の小遣いはやる。
必要な社交だけしてもらうが、あとは自由だ。
貴族の血を継ぐ子が必要だから、お前と結婚しただけだ。
愛する人がいるからお前に触れたくはないが、跡継ぎのためには仕方がない。
子が産まれたら、母と愛する人が面倒を見るから産むだけでいい。楽だろ?」
「愛する人というのがエリナさんなのですね?平民?」
「愚弄するな!」
「事実確認です。」
「…何で名前を知っている?」
「あなたが昨夜、夢中で連呼してましたよ?」
ギルバート様の顔が赤くなりました。思い出したのかしら?
「産んだら自由…ですね?どの程度の?」
「この侯爵家を貶めるようなことをしない程度だ。」
「…では世間にバレなければ愛人はいいってことですね。あなたと同じですものね?」
「ああ、そうだな。好きにすればいい。」
「では、書面に残してサインして下さる?お互いに後で揉めるのはご免でしょう?」
「…わかった。この政略結婚の正式な契約書にする。
エリナは母のお気に入りだ。近づくな。お前は子を産んだら別邸に住んでもらう。」
そう言って指さした先には屋敷があった。新婚か老後かを過ごすために建てられたのだろう。
「父が当主の間は社交もほとんど必要ない。楽な結婚だろ?」
私の返事を聞くことなく、ギルバート様は部屋から出て行った。
…楽な結婚?どうなのかしら?
侯爵家の女主人の仕事をするわけでもなく、子供の成長も見ることもなく過ごすのよね?
それって暇すぎない???あと40年近く人生は続くのよ?
実家で仕事してる方が楽しいに決まってるわ。
でも侯爵家に盾突いたら実家が危ないわよね。
仕方ない。ここでやれることを探して、楽しみを見つけるしかないわね。
夕方、ギルバート様が契約書を持ってやってきた。
朝の話が細かく書かれている。お小遣いの額までね。…多いわね。さすが侯爵家。
私に望まれていることは、子供を一人産むことと最低限の社交だけ。
ちゃんと私の愛人も可になってるわ。…自棄になって聞いたんだけどね。
問題ないので、私もサインした。これって実家の両親が見たらどう思うかしらね?
私に与えられた部屋は図書室に近かった。暇つぶし出来る。ありがたい。
部屋に籠って本を読み漁る日々に慣れた頃、妊娠が判明した。わぁ。あんなのでも出来るのね。
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