政略結婚はお互い様なので自由度もお互い様でいいですね。

しゃーりん

文字の大きさ
2 / 10

2.

しおりを挟む
 
 
翌朝、侍女に起こされて身支度を手伝ってもらい、部屋で朝食を食べた。もちろん一人でね。
お茶を飲んでいると、ギルバート様がやってきた。話をしてくれるのね。

「子供を一人産め。女主人の仕事はしなくていい。毎月、ある程度の小遣いはやる。
 必要な社交だけしてもらうが、あとは自由だ。
 貴族の血を継ぐ子が必要だから、お前と結婚しただけだ。
 愛する人がいるからお前に触れたくはないが、跡継ぎのためには仕方がない。
 子が産まれたら、母と愛する人が面倒を見るから産むだけでいい。楽だろ?」

「愛する人というのがエリナさんなのですね?平民?」

「愚弄するな!」

「事実確認です。」

「…何で名前を知っている?」

「あなたが昨夜、夢中で連呼してましたよ?」

ギルバート様の顔が赤くなりました。思い出したのかしら?

「産んだら自由…ですね?どの程度の?」

「この侯爵家を貶めるようなことをしない程度だ。」

「…では世間にバレなければ愛人はいいってことですね。あなたと同じですものね?」

「ああ、そうだな。好きにすればいい。」

「では、書面に残してサインして下さる?お互いに後で揉めるのはご免でしょう?」

「…わかった。この政略結婚の正式な契約書にする。
 エリナは母のお気に入りだ。近づくな。お前は子を産んだら別邸に住んでもらう。」

そう言って指さした先には屋敷があった。新婚か老後かを過ごすために建てられたのだろう。

「父が当主の間は社交もほとんど必要ない。楽な結婚だろ?」

私の返事を聞くことなく、ギルバート様は部屋から出て行った。

…楽な結婚?どうなのかしら?
侯爵家の女主人の仕事をするわけでもなく、子供の成長も見ることもなく過ごすのよね?
それって暇すぎない???あと40年近く人生は続くのよ?
実家で仕事してる方が楽しいに決まってるわ。
でも侯爵家に盾突いたら実家が危ないわよね。
仕方ない。ここでやれることを探して、楽しみを見つけるしかないわね。

夕方、ギルバート様が契約書を持ってやってきた。
朝の話が細かく書かれている。お小遣いの額までね。…多いわね。さすが侯爵家。
私に望まれていることは、子供を一人産むことと最低限の社交だけ。
ちゃんと私の愛人も可になってるわ。…自棄になって聞いたんだけどね。
問題ないので、私もサインした。これって実家の両親が見たらどう思うかしらね?


私に与えられた部屋は図書室に近かった。暇つぶし出来る。ありがたい。
部屋に籠って本を読み漁る日々に慣れた頃、妊娠が判明した。わぁ。あんなのでも出来るのね。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

お飾り妻は天井裏から覗いています。

七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。 何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

エメラインの結婚紋

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――

結婚式の前日に婚約者が「他に愛する人がいる」と言いに来ました

四折 柊
恋愛
セリーナは結婚式の前日に婚約者に「他に愛する人がいる」と告げられた。うすうす気づいていたがその言葉に深く傷つく。それでも彼が好きで結婚を止めたいとは思わなかった。(身勝手な言い分が出てきます。不快な気持ちになりそうでしたらブラウザバックでお願いします。)矛盾や違和感はスルーしてお読みいただけると助かります。

処理中です...