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翌日の昼休み、穏やかな笑顔でローリエが座る近くに来た彼に、直球で聞いた。
「あなたは、クレソン王太子殿下、なのですね?」
彼は驚いた顔をした。この表情は初めて見たと嬉しい気持ちになった自分はどうかしている。
「ああ。……誰かに教えてもらった?」
「はい。長い間、失礼しました。」
「いや、構わない。君が知らないからこそ、ここで会い続けることができた。」
「そうですか。私が誰かもご存知なのですよね?」
「ああ。ローリエ・ハーブス男爵令嬢。……私たちの祖父は腹違いの兄弟になる。」
彼がそう言った時、彼の友人2人が驚いてこちらを見た。
「王家では祖父の存在は黙殺されたものと思っていました。」
「記録上の記載はないし、私も誰かから聞いたわけではないけどね。父や祖父が知っていたかどうかも確かめたことはない。」
「では、どうして?」
「日記を読んだ。曾祖父の王太子時代の日記だ。部屋に隠されたように置いてあった。」
「そうでしたか。我が家では一応伝わっていました。」
「……王家は卑怯で、弱虫だ。隣国王女だった曾祖母の言いなりで未だ怯えているかのようだ。
おそらく父も抗うことはできない。つまり、きみも犠牲になる。私はそれを阻止できない。」
『ワケアリ』結婚を国王陛下はハーブス家に強いる。
今の国王陛下は私に、そして次の国王陛下になる彼は私の子供に強いるのだ。
ひょっとして、
「あなたがマドラス公爵令嬢に婚約を考え直したいと言ったのはそれが原因ですか?」
彼は上を向いてため息をついた。これも初めて見た。
「オリヴィエ嬢と会ったのか。だから、私が王太子だと知ったのか。
あの言葉は、思わずふと出たんだ。
彼女にも聞かなかったことにしてくれと言ったんだが、呆然としていたから聞こえてなかったんだな。」
こんなことは聞いてはいけない。だけど、聞いてみたかった。
「マドラス公爵令嬢との結婚をやめたかったのですか?それとも王太子をやめたかったのですか?」
彼は少し考える素振りをして答えた。
「どっちもだな。彼女は私にはもったいない。そして私は王太子の器ではない。
国益よりもハーブス男爵家を、君を何とかしたいと思ってしまったのだから。」
彼がどうすることもできないと苦悩しているということは、王家は王女個人とではなく彼女の国とハーブス家についての取り決めをしたのだろう。
3代目の父までは王女の手によって相手は決められていたが、4代目と5代目は違う。
ちゃんと条件通りかどうか、国の誰かに頼んでいるかもしれない。
あるいは、忘れ去られているかもしれない。
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忘れ去られていれば、普通の結婚も可能かもしれない。
だが、万が一、指摘されれば、隣国に知られれば、国の信用を失うことになる。
だから、今の国王陛下も私に『ワケアリ』を送り込んで結婚させるしかない。
ハーブス家だけが罰を受け続けていることを王家は卑怯だと感じながらも何もできない。
彼はそのことに葛藤し続けていたようだ。
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