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しおりを挟むルチアは純潔ではない。破瓜している。
医師のその言葉に、父はリオンを罵倒し、母は呆然とし、ルチアは微笑んでいて……
レティシアは信じたくない思いでリオンを見続けていた。
「嘘だっ!僕はルチアを抱いていないんだっ!本当に、記憶にない。僕じゃない、僕じゃ……」
リオンが必死に叫ぶ。
嘘をついているようには見えなくて、レティシアは少し冷静さを取り戻した。
しかし、酔って覚えていないだけで、本当は?という思いもある。
父が狂ったように叫ぶリオンに怒鳴った。
「往生際が悪いっ!ひとまず今日は帰ってくれないか?私たちも家族で話し合わなければならない。」
「話し合いって、……嫌ですっ!僕はレティシアと結婚します!!」
話し合い、って私たちの婚約解消ってことよね。
ルチアは本気でリオンと結婚しようと?
どうして……
リオンが侍従に連れ出され、父がルチアに聞いた。
「ルチア、アイツは否定しているが、間違いないんだな?」
「はい。お姉様と間違われていることを承知で抱かれたことは認めるわ。それでもいいと思ったの。リオン様となら、私は幸せになれると思って。元を正すだけよ。」
リオンが人違いをしていると知っていて、抱かれた?
リオンとなら幸せになれると思って?
元を正すって、どういうこと?
レティシアの頭にはルチアの言葉がグルグルと回っていた。
「はぁ。アイツもお前もとんでもないことをしてくれたものだ。頭が痛いよ。」
父はそう言って、部屋から出て行った。その後を母も追って行く。
レティシアはルチアと二人になり、ルチアに聞いた。
「ルチア、どういうことなの?リオンに抱かれたなんて嘘なんでしょ?」
「どうして?私は純潔じゃないって証明されたわ。」
「リオンが相手とは限らないわ。」
リオンには記憶がない。
その間に、ルチアが別の人と、……いえ、今日じゃなくてもいいんだわ。
ルチアは、リオンでもなく婚約者のジョエル様でもない誰かと関係を持ったのよ。
「お姉様、現実を見たくないのはわかるけれど、リオン様もただの男だったってだけだわ。
記憶にない、覚えていないなんて言っていたけれど、それも本当かどうかわからないじゃない。」
「私はリオンを信じているわ。」
そう。信じてる。
いくら酒に弱いといっても、お茶に入れた程度の酒でそこまで酩酊になるはずもない。
意識が戻ったリオンに酔った様子もなかったし。
間違ってルチアを抱いたのであれば、あそこまで否定できないはず。
少しでも覚えていれば、リオンなら責任を取ると言ったと思うから。
「信じている、ね。だけど、もうどうしようもないわ。」
「どうしてこんなことを?あなたにも婚約者がいるのに。」
「……だって、ジョエル様、全然優しくないんだもの。」
「そんなことで?ジョエル様を選んだのはあなたじゃないの。」
ジョエル様とリオン。
私たち姉妹には、同時に二人から縁談の話が来た。
ジョエル様はレティシアの一歳上の侯爵令息で、リオンはレティシアと同い年の伯爵令息。
ルチアは自分より二歳上のジョエル様と婚約したいとレティシアの希望も聞かずに父にねだった。
どちらかと言えばレティシアよりもルチアに甘い両親は、それを受け入れた。
ジョエル様のこともリオンのことも、当時はあまり知らなかった相手なので、ルチアがジョエル様がいいと言うのであれば構わなかった。
つまり、ルチアが元を正すと言ったのはジョエル様ではなくリオンを選び直すということらしい。
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