15 / 19
15.
しおりを挟むアデラインのしたことを聞いたライザは、それでも取り乱すことなく言った。
「そう。そういうことだったのね。何か変だと思ったの。」
ライザは修道院に入ることになった経緯を話してくれた。
ほぼ、アデラインが語ったことと同じだった。
子供は侯爵家でバリーの庶子として引き取ることを決めたからアデラインが迎えに来たと言った。
ライザがバリーの愛人になるなら、家を用意するつもりだとも。
だけど、ライザは愛人になることは望んでいない。バリーには襲われたのだと告げた。
アデラインは、ライザが愛人になることを望まなかった時のために修道院に避難する馬車も用意していた。
愛人を断ったと知ったら、バリーは今晩にも伯爵家の使用人に命令してライザを眠らせてさらうだろう。
逃げるなら今しかないとアデラインが言った。
ライザもバリーへの恐怖から、馬車で逃げることを選んだ。
アデラインは、ひと月避難している間にライザの両親が隠れ家を探すだろうと言った。
その間の寄付金も馬車に置いてあった。
修道院では何もしなくてよかったが、質素な暮らしをひと月間送った。
手紙を書いても送ってもらえず、外の様子が全くわからなかった。
やがて、アデラインから手紙が届いた。
実家からの絶縁状も入っていた。
手紙には、実家はライザと縁を切ることを望んだ。そのため修道院から出られない。
つまり、寄付金もないしライザは平民になるということが書かれていた。
絶縁状にサインをして届け出るようにとも書いてあった。
「だけど、手紙は送れないし、あそこから出ることも許してもらえなかった。
だから、絶縁状は持ったままだったの。
どうしたらいいのかな?って思ってたけど、両親が勝手に手続きを済ませるかと思って。
それからは毎日忙しくて、何も考えたくなかった。」
「そういうことか。
アデラインは手紙を送れないように指示していたから絶縁の手続きができてなかったんだ。」
この国では、絶縁する方法は2つ。
1つは、罪を犯した身内を戸籍から外す。これは本人の同意なくできる。
もう1つは、双方が望んで戸籍から外す。ライザたちはこちらだった。
両親のサインが入った絶縁状をライザがサインしてから届け出る予定だったのに送れなかったのだ。
「……あの修道院がバリーの領地にあるものだと知っていたか?」
「少ししてから知った。初めは怖かった。
だけどいつも代理が来るし、下働きは出ていかないもの。」
「そうか。ずっと怯えていたわけじゃないのなら良かった。
だけど……こんなに痩せて。手も傷だらけだ。
修道院で穏やかに過ごしているか、修道院を出て平民として暮らしているのかと思ってた。
本当に遅くなってごめんな。」
「……お兄様。私、これからどうすれば……」
「それはゆっくり考えよう。焦らなくていい。」
「うん。……ヒューはどうして一緒に?手紙も送ろうとしてくれてたって。」
ずっと泣いている僕にライザが声をかけてくれた。
「僕が親に監禁されている間にライザは実家に戻って修道院に行ってた。
親には勝手に再婚相手まで用意されていた。
そんな時、アデラインに会ったんだ。
彼女ならライザがいる修道院を知っているかもしれないと思って。
修道院を手配したのが彼女だと知って、場所は教えられないけど手紙を送ってくれると言われて。
ライザを迎えに行くには、跡継ぎを育ててからでないと無理だろうとアデラインに言われたんだ。
だから養子を貰って……数年で育てられる15歳くらいが良かったのに両親は5歳の子を……
10年経ってようやく子供が15歳になった。
あと3年、あの子が学園を卒業すればライザと領地で暮らしてもいいって父が言うんだ。
どうかな?」
「どうかなって……
その前にお前がライザを迎えに行くのに時間がかかるようにしたのがあの女だと気付いてるか?
跡継ぎを育ててから迎えに行けってことは何年も迎えに行けないようにしたんだよ。」
「あ……そっか。そういうことか。ごめん、ライザ。」
「……ヒューは私を迎えに来てくれようとしていたのね。再婚相手は?」
「不能だと言って抱かなかったら、執事見習いと浮気したから離婚した。」
「……3年後、どうするかはまだわからない。ゆっくり考えたいわ。」
「うん。会いに行くのはいいかな?」
「両親が許すなら。」
とりあえず拒否されなかったことに僕はホッとしていた。
だけど、平気そうに見えたライザの心は不安定だった。
70
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる