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18.
朝、目覚めたライザは昨日と同じライザだった。
つまり、自分が僕の愛人だと思っているライザだ。
そして僕は許可された上でライザを抱いたが、他家で迎える朝はとてつもなく恥ずかしいと思った。
このままでは僕がここに通ってライザを抱くために泊まる日々になる。
それはここがライザの実家だとしてもライザの兄夫婦や子供たちにもよくない。
僕の両親にも許可を得ていたので、ライザを僕の領地に連れていきたいという話をした。
「本当に?一緒にいてくれるの?あなたの子供、まだ生んでないわ?それでも?」
「うん。ライザは僕の愛する人。これからはずっと一緒にいよう。」
「でも、跡継ぎは?」
「大丈夫。養子がいる。あの子はもうすぐ学園を卒業する。
爵位は父からその子に継がせるから、僕は領地の仕事を手伝えばいいと言ってくれた。」
「……養子…。そう、そうだったわね。私が生まなくてもいい?でも………」
何か考え込んでいるライザを不安に思い、意識をこっちに向けようと呼んだ。
「ライザ!僕と一緒に行ってくれるか?」
「ええ、もちろんよ。嬉しい。お兄様、いいでしょう?」
「………ああ。お前が幸せなら問題ないよ。ヒューイット、ライザを頼む。」
「はい。」
数日後、僕とライザは領地へと向かった。
ライザの両親へは挨拶できていないが、領地での生活が落ち着いたら行こうということになった。
後日、ライザの両親からの手紙でも、それでいいと書かれてあった。
領地では別邸で生活した。
あまり使用人と接することのない2人きりの生活をライザが望んだからだった。
それでも、僕が仕事をしている時に料理を教えてもらったりして楽しんでいるようだった。
そして、閨事にも積極的な理由はわかった。
修道院にいるときに、性に奔放だった元令嬢がライザにいろいろなことを吹き込んだようだ。
それが、ライザの中の愛人像になってしまったらしい。
領地で恋人がいたわけではないと知り、勝手な僕はホッとした。
そんな生活を3年、ごちゃごちゃな記憶が元に戻る様子もないまま穏やかに楽しく過ごしていたある日、思わぬ事があった。
ライザが妊娠したのだ。
これが、僕たちが寿命よりも早くこの世を去ることになるキッカケとなった。
「先生、間違いないのですか?」
「………はい。ですが、無事に育たない可能性が高いかもしれません。」
ライザは34歳になっていた。
立て続けに妊娠を繰り返している女性では無事に出産できた例はあるが、ライザが妊娠したのは15年ぶりなのだ。
出産の頃には35歳になる。
女性の妊娠は、28歳まで。危険を承知で30歳までというのが常識だった。
月のものがずっと止まっていたので、まさかと油断していたのは紛れもない。
「ヒュー、嬉しいわ。やっとあなたの子供ができたの。」
心のどこかで、あの子が僕の子供ではなかったことを傷のように覚えているのだろう。
それが僕の子供を生みたいということに繋がっているように思った。
「まだまだ会えるのは先ね。楽しみ。ねぇ、名前はどうする?」
「名前?生まれるまで性別がわからないからなぁ。どっちも考えるか?」
前の時も、いくつか候補を考えた。
「そうね。何がいいかな。……ルーフェス、ルーシャ、ルー……」
「……何でルーばっかりなんだ?」
「どうしてかしら?ヒューみたいに呼びやすいから?じゃあ、ルーって呼ぼうかしら。」
ライザはお腹に手を当てて、『ルー』と言っていた。
前の時も、同じような会話をした。その時は、『ルー』じゃなかったけど似た響きだった。
無意識に前の呼び名は避けたのだろう。
幸せそうなライザを見て、無事に育ってほしいと思っていた。
だけど、わずか半月後、『ルー』は逝ってしまった。
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