18 / 19
18.
しおりを挟む朝、目覚めたライザは昨日と同じライザだった。
つまり、自分が僕の愛人だと思っているライザだ。
そして僕は許可された上でライザを抱いたが、他家で迎える朝はとてつもなく恥ずかしいと思った。
このままでは僕がここに通ってライザを抱くために泊まる日々になる。
それはここがライザの実家だとしてもライザの兄夫婦や子供たちにもよくない。
僕の両親にも許可を得ていたので、ライザを僕の領地に連れていきたいという話をした。
「本当に?一緒にいてくれるの?あなたの子供、まだ生んでないわ?それでも?」
「うん。ライザは僕の愛する人。これからはずっと一緒にいよう。」
「でも、跡継ぎは?」
「大丈夫。養子がいる。あの子はもうすぐ学園を卒業する。
爵位は父からその子に継がせるから、僕は領地の仕事を手伝えばいいと言ってくれた。」
「……養子…。そう、そうだったわね。私が生まなくてもいい?でも………」
何か考え込んでいるライザを不安に思い、意識をこっちに向けようと呼んだ。
「ライザ!僕と一緒に行ってくれるか?」
「ええ、もちろんよ。嬉しい。お兄様、いいでしょう?」
「………ああ。お前が幸せなら問題ないよ。ヒューイット、ライザを頼む。」
「はい。」
数日後、僕とライザは領地へと向かった。
ライザの両親へは挨拶できていないが、領地での生活が落ち着いたら行こうということになった。
後日、ライザの両親からの手紙でも、それでいいと書かれてあった。
領地では別邸で生活した。
あまり使用人と接することのない2人きりの生活をライザが望んだからだった。
それでも、僕が仕事をしている時に料理を教えてもらったりして楽しんでいるようだった。
そして、閨事にも積極的な理由はわかった。
修道院にいるときに、性に奔放だった元令嬢がライザにいろいろなことを吹き込んだようだ。
それが、ライザの中の愛人像になってしまったらしい。
領地で恋人がいたわけではないと知り、勝手な僕はホッとした。
そんな生活を3年、ごちゃごちゃな記憶が元に戻る様子もないまま穏やかに楽しく過ごしていたある日、思わぬ事があった。
ライザが妊娠したのだ。
これが、僕たちが寿命よりも早くこの世を去ることになるキッカケとなった。
「先生、間違いないのですか?」
「………はい。ですが、無事に育たない可能性が高いかもしれません。」
ライザは34歳になっていた。
立て続けに妊娠を繰り返している女性では無事に出産できた例はあるが、ライザが妊娠したのは15年ぶりなのだ。
出産の頃には35歳になる。
女性の妊娠は、28歳まで。危険を承知で30歳までというのが常識だった。
月のものがずっと止まっていたので、まさかと油断していたのは紛れもない。
「ヒュー、嬉しいわ。やっとあなたの子供ができたの。」
心のどこかで、あの子が僕の子供ではなかったことを傷のように覚えているのだろう。
それが僕の子供を生みたいということに繋がっているように思った。
「まだまだ会えるのは先ね。楽しみ。ねぇ、名前はどうする?」
「名前?生まれるまで性別がわからないからなぁ。どっちも考えるか?」
前の時も、いくつか候補を考えた。
「そうね。何がいいかな。……ルーフェス、ルーシャ、ルー……」
「……何でルーばっかりなんだ?」
「どうしてかしら?ヒューみたいに呼びやすいから?じゃあ、ルーって呼ぼうかしら。」
ライザはお腹に手を当てて、『ルー』と言っていた。
前の時も、同じような会話をした。その時は、『ルー』じゃなかったけど似た響きだった。
無意識に前の呼び名は避けたのだろう。
幸せそうなライザを見て、無事に育ってほしいと思っていた。
だけど、わずか半月後、『ルー』は逝ってしまった。
85
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる