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しおりを挟むダイアナは、王宮から戻った父の顔を見て、婚約解消はできなかったのだとわかった。
「すまない。ダイアナが学園を卒業するまでに記憶が戻らなければ婚約は解消することになったが、それまで婚約は続けることになった。あと、一年と二か月ほどだな。」
「卒業までに記憶が戻らなければ婚約は解消なのですね。記憶が戻れば婚約は継続ということでしょうか?」
「その時はダイアナの意思を確認することになっている。国王陛下は、お前がジルベール殿下との結婚を望んでいるのだと信じているそうだ。」
「まあっ!でもそうかもしれませんわね。以前のわたくしは婚約が解消されないようにと努力していたようですので。」
今のダイアナには以前のダイアナの気持ちもわからないわけではないが、両親の気持ちを大事にしたいという思いの方が強かった。
両親は、ダイアナに幸せになってもらいたい。
ジルベールとの結婚は、傍から見れば確かに幸せになるとは思えない。
以前のダイアナは、自分が国のためになれるのであれば、という思いが強く、それを自己犠牲と思うこともなく、そういう結婚もあると前向きだったのだと思った。
今の自分が、以前の自分を分析しているのも変に思うが、そういうことなのだと思う。
「側妃制度は復活させないと国王陛下はおっしゃった。だからおそらく、卒業までにダイアナの記憶が戻らなければ、その後は王太子の交代ということになるだろう。」
「側妃制度の復活とは何ですの?」
側妃とは正妃とは別の妻のことを指す言葉だったはず。
いわゆる一夫多妻制であり、その制度は近隣のほとんどの国でも廃止になっているのでは。
「あぁ、そうか。これは話してなかったな。ダイアナは一昨日、ジルベール殿下から側妃制度を復活させるつもりでいると言われたんだ。おそらく、お前の誕生パーティーで婚約解消を宣言できなかった腹いせか、結婚したくないとお前の口から言わせようとしていたかだと思うが。」
このまま結婚しても、ダイアナを愛することはないと言ったも同然である。
しかし、愛人がジルベールの側にいることを許していたダイアナが側妃制度にひるんだとも思えない。
「以前のダイアナのことがよくわかりませんわ。愛人や側妃がいても平気そうに思えますが、タイミング的には側妃の話がショックで記憶を失ってしまったようにも思えます。」
「そうだよな。だがやはり、そこまでジルベールに嫌われていたと知ってショックだったのではないか?ダイアナのことだから、ジルベールのためを思えば婚約は解消するべきなのだろうかと悩んだのかもしれない。」
国のために働くことを望む国王夫妻に従うか、ジルベールが望む相手と結婚できるように身を引くべきか。
今のダイアナが悩んでも、記憶が戻ることはなかった。
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