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ジルベールとミオナを祝福するような拍手が沸き起こり、それが収まった時に国王陛下が前に出てきた。
「ジルベールとダイアナ・クロスフォード公爵令嬢の婚約は解消することとする。」
また拍手が起こり、国王陛下は収まってから続けた。
「ジルベールとミオナ・クラークス男爵令嬢の婚約を認めることとする。」
先ほどよりも大きな拍手が起こり、国王陛下はそれが収まってからまた続けた。
「慣例に則ってジルベールは廃太子とし、結婚後は伯爵位と領地を与える。」
これには拍手にバラつきがあった。
ジルベールの廃太子は当然だが、伯爵として領地管理ができるのか疑問に思う声もあった。
「ちょっと待ってください。父上、伯爵とは?慣例とは何です?」
「王太子妃になれるのは、他国の王女か自国の高位貴族令嬢と決まっている。下位貴族令嬢との結婚を望むのであれば、王太子の地位を降り、伯爵位と王領の一部を領地として授けることが決まっているが?
お前は当然それを承知の上で、その男爵令嬢を選んだはずだ。」
知らなかったとは言わせない。言ってはならないという雰囲気があった。
「クロスフォード公爵からもお前とダイアナの婚約解消を請われていたが、卒業まで待ってもらっていた。
お前が意中の令嬢と結婚できるのは、公爵家の許しがあったからこそだということを忘れるな。」
ジルベールが宣言しなくとも、ダイアナとの婚約解消は決定事項だったと国王陛下は知らしめた。
国王陛下は既に覚悟を決めていたのだろう。
卒業するまでにダイアナの記憶が戻らなければ、いずれにせよ婚約は解消となっていた。
側妃制度を復活させようと企むようなジルベールよりも、第二王子のエトワールを王太子にするべきであることはもうわかっていたのだ。
呆然としている誕生日の主役、ジルベールを置いて、パーティーは続けられていた。
ハッとしたジルベールはキョロキョロしてダイアナを見つけて近寄り、何か言おうとして驚きの表情を見せた。
「ダイアナ?お前、そんなだったか?」
ジルベールが何を言いたいのかがわからなかった。
「おっしゃる意味がわからないのですが?」
「いや、お前、もっと子供みたいでいろいろ小さかった気が……」
「先ほどエスコートしていただいた時と何も変わっておりませんが。」
ダイアナは首を傾げて、ジルベールがおかしくなったのかと思ったが、やがて、今日の話ではなくこの数か月間の変化のことを言っているのだとわかった。
ダイアナは記憶をなくしてからのこの九か月間で身長は伸び、胸も膨らんでいる。
母曰く、健康的で楽しい毎日を過ごすことによって、遅れて成長期がやってきたのではないか、と。
つまり、以前のダイアナの毎日は心身の成長を阻害するようなものであったということである。
「こんなに変わるなら、こんなことをしなかったのに。」
つまりは以前のダイアナの体形が気に入らなかったから、婚約を解消したかったらしい。失礼な話だ。
「男爵令嬢とお幸せに。王太子の座は殿下には重責だったようですからよかったですわね。」
ダイアナとしては最大の皮肉ではないだろうか。
* * *
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