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しおりを挟む【現在】
ダイアナは、ジルベールとの婚約が解消されたことを知った。
「え……!?わたくし、王太子妃にならないのですか?」
「ああ。お前はなりたかったのか?」
なりたいとか、なりたくないという問題ではなかった。
「王太子妃になって、ジルベール様を支えて、国のために尽くすものだとばかり思っておりました。」
ジルベールとの結婚がなくなったと聞き、ダイアナは重荷を下ろしたようにホッとした。
「エトワール殿下が王太子に?」
「ああ。婚約者は以前から内定していた侯爵令嬢に決まった。」
「わたくし、本当に不要になりましたのね。……でしたら、どこか国に関わる部署でお手伝いをさせていただこうかしら。」
王太子妃としては不要になっても、これまでの知識を役立てることはできるはず。
婚約を解消され18歳にもなった公爵令嬢はもう、どこにも引き取り手はないだろうから。
「いやいや、ちょっと待ってくれ。まだこれで全部じゃないんだ。」
ジルベールとの婚約解消が三か月前。
まだその後にも何かあったらしい。
* * *
【3か月前】
ダイアナは、ジルベールと婚約解消したことは何も気にならなかった。
両親はそれを望んでいたし、今のダイアナはジルベールと話したことは四回だけだが、そのどれも印象が悪かったこともあり、以前のダイアナには申し訳ないが、婚約解消されてよかったと思っていたから。
それに、学園でも見かけることはほどんどなかったために、ダイアナの学園生活に支障もなかった。
「ダイアナ様、婚約解消おめでとうございます。」
「あら。ありがとう。今までも婚約者だという気はしていなかったから変な気がするわ。」
以前のダイアナならどう思ったか。
真逆の選択をしていた今のダイアナにはわからなかった。
「ダイアナ様、ストーンズ様の婚約者であるケイトリン様が言いがかりをつけてくるかもしれないので気をつけてくださいね。」
「まあっ!ケイトリン様がなぜ?」
ケイトリン・ポッシュ伯爵令嬢。
ダニエル・ストーンズ侯爵令息の婚約者である。
一つ下である彼女に、ダイアナはまだ挨拶をしたことがなかった。
「ダイアナ様が学園で他の男といるという発言をジルベール殿下がされた時、ケイトリン様はその”他の男”というのが自分の婚約者なのだと嘆いておられたそうです。」
「嘆いて?……以前は確か、喜んでいたという噂ではなかったかしら。」
「演技ですよ。婚約者が公爵令嬢と親しげにしているため自分は身を引くべきよね、というパフォーマンスです。ですが、彼女がストーンズ様を苦手としていることは周知の事実であるため、意味ないのですけどね。」
ケイトリン本人が、ダニエルの陰口を言っているのを多くの者が耳にしており噂にもなっている。
それなのに言った本人は、自分をダニエルの健気な婚約者であると思い込んでいる。
そのため、ダニエルとダイアナのために自分は身を引くという悲劇の主人公を演じるつもりでいるが、実際はケイトリンがただダニエルと婚約解消する理由にしたいだけだと誰もがわかっているという。
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