元兄嫁の妻と年上の未亡人と行き場のない愛人

しゃーりん

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ケビンは取ってきた飲み物をジュリアに手渡した。


「レモン水にしたよ。」

「ありがとう。」 

 
ジュリアをケビンの妻だと思わずに、まだ愛人だと思っていた女性二人は呆然としたままケビン達を見ていた。まさか、愛人を妻にするとは思っていなかったといったところか。
 
一方の過去に一度だけ遊んだ女性はジュリアを排除しようとし、もう一方の浮気で離婚歴のある女性はジュリアが愛人でいることを認める発言をしたが、どうせ身を引くように仕向けるつもりだったはずだ。
 
ケビンが言えたことではないが、どちらも性に奔放な女性で彼女たちを妻にしたい男はいないだろう。
 

「ようこそ、遅れてしまってごめんなさいね。楽しんでくれているかしら?」


夜会の主催者である公爵夫妻がケビン達の近くからやってきていた。


「カーマイン伯爵、夫人。結婚おめでとう。ふふ。それにもう一つ、お祝いがありそうね。」


公爵夫人はジュリアの飲み物を見ながらそう言った。
 
いつから見ていたのだろうか。
おそらく、ジュリアが高いヒール靴を履いていないことにも気づいていそうだ。


「ありがとうございます。静かに見守っていただければ幸いでございます。」
 

ジュリアは妊娠初期だ。
入籍後、すぐに発覚した。
避妊を止めてすぐに出来たことから、やはりジュリアは不妊ではなかったのだ。


「ミシュリーに聞いていたけれど、ふふ。お似合いの二人ね。お幸せにね。」

「ありがとうございます。」


公爵夫人はミシュリーと友人なのだろう。
年齢も同じくらいなのかもしれない。

ケビンもジュリアも、ミシュリーにとって話のネタの一つなのだろうが、嫌な気はしなかった。
公爵夫妻がケビンたちに目をかけてくれたという援護でもあったからだ。

まだ若い伯爵夫妻である自分たちには頼れる者は少ないため、有難かった。


その後は誰にも絡まれることなく、無事に帰宅できた。


「疲れただろう?」

「大丈夫よ。まだ悪阻もないし。」 


今回の夜会は夫婦として初めて参加する予定だったこともあり、妊娠がわかっても行くことにした。 
しかし今後はしばらく屋敷内で過ごすことになるだろう。


「俺たちの子、か。楽しみだな。」


もしも子ができなくても構わないと思っていたが、やはり自分の子ができたのは嬉しいものだ。

マリアンナのことは兄に似ていればよかったのにと思いながらも、それでも可愛いと思っていたし、妹だとわかってもそれは変わらない。 
 
産まれる子の姉として、マリアンナにも可愛がってほしいと思っている。



カーマイン伯爵家の騒動をきっかけに、高額でも親子鑑定を求める貴族が増え、簡易化されたものが売られることになったという。

そして恐ろしいことに、一人目の子供は実子でも二人目は違ったという話が何件かあったらしい。
どうやら、妻が一人目を妊娠中に夫が浮気をして、その腹いせに妻も浮気をし始めるとどちらの子かわからなくなったというパターンが多いらしい。
 
ちなみに、ジュリアの元夫もそれが原因で離婚したという。
ジュリアを蔑ろにしてまで手に入れた女性との愛は、ジュリアという障害があってこそのものだったのだろう。

だがそのお陰で、ケビンはジュリアと愛し合える関係になれたのだから感謝したいほどだ。
 


大人しい同級生という印象しかなかったジュリアが今は、ケビンに寄り添い安心を与えてくれる。
我が子を身籠ってくれている彼女が日に日に愛おしく、美しく見える。


「ジュリア、愛してるよ。」


自分がこんなことを口にするタイプとは思っていなかったが、零れ出てしまうのは仕方がないだろう。

ジュリアの微笑みは、もうなくてはならないものなのだから。


<終わり>
 
 
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