聖女の後悔

しゃーりん

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数日後、話し合いのため、グリーン伯爵がトワイニング侯爵家にやって来た。 
 
 
「ちょうどよかったです。実は特別仕様の馬車の図面と費用概算が届いたところでして、お渡ししようと持ってきましたよ。」


グリーン伯爵は笑顔でそう言ったが、ジークハルトも父も話し合いの意図がわかっていないのではないかと眉をひそめた。


「馬車のことはうちには関係のないことなので伯爵家が勝手にすればいい。」


父がそう言うと、伯爵は驚いていた。


「関係ないだなんて、ひどいではありませんか。この馬車はアドリアナがトワイニング侯爵家に嫁いだ後に使うものなので、侯爵家が支払うべきものだと思いますが。
結婚してからでは遅くなるので、私は娘のために先に手配をかけたまでです。親切で先駆けたというのに、勝手にすればいいと言われるとは思いませんでしたよ。」
 

グリーン伯爵はこんな人だっただろうか。

そもそも、その結婚自体をどうするかという話し合いのはずなのだが。


「破談にするかどうかの話し合いに、馬車の費用を払えと言う伯爵の品位を私は疑うが。」
 
「は、破談!?どいうことです、聖女であるアドリアナとの縁を切るおつもりか?」


父の送った手紙をちゃんと読んで来なかったのだろうか。


「息子の嫁に願ったのはアドリアナ嬢で聖女ではない。彼女が今までのように、王都で治癒師として活動するのであれば結婚しても貴族夫人との両立は可能だと思っていた。
だが、国中を回りたいというなら別だ。ジークハルトを一緒に行かせる気はない。」

「一緒に行かない!?では、アドリアナに一人寂しく回れと言うのですか?」

「まるでたった一人で行くみたいに言うが、護衛や侍女も行くはずだ。ジークハルトが共に行く必要はない。侯爵家の跡継ぎとしてやらねばならないことがある。」

「聖女の夫として支えになるのは当然のことではないですか!跡継ぎなど、誰でもいいのでは?」


伯爵は本気で言っているのか?


「ならば、それこそ聖女の夫は誰でもいいではないか。むしろ、跡継ぎではない男を連れ回すことをお勧めするよ。」


確かに。
父の言葉に納得する思いがあった。

聖女の心の支えになれる夫が必要と言うのであれば、共に行くことを望む男が夫になればいい。
跡継ぎだから共に行けないと思ったジークハルトである必要はないのだ。


「……後悔しても知りませんよ?聖女の力が必要になっても、断られてもいいんですか?」


これは、脅しか?
 

「慈愛の聖女本人が断れるのならな。まぁ、断った時点で聖女の名を穢すも同然だが。」


伯爵は悔しそうな顔をした。


「喜んで破談に応じます。こちらは聖女になったアドリアナに相応しい相手とは思えませんので。」


負け惜しみのように伯爵はそう言って帰って行った。



 
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