聖女の後悔

しゃーりん

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約三年ぶりに王都に戻ってきた聖女アドリアナ。

馬車は真っ直ぐに、グリーン伯爵邸に到着した。


「アドリアナっ!!」

「お父様、お母様、ただいま戻りました。」

「おかえり。……こんなに痩せて、大変だったろう。」


アドリアナは、丸みをおびていた頬は膨らみがなくなり、また、胸の膨らみも萎んでいた。
女性らしい柔らかさがほとんどなくなった体形になっていた。 


「大丈夫です。お父様も少し、痩せました?」

「ああ。お前が心配でね。こんなに長くなるとは思ってなかったから。」


国土の1/6に三年かかったのだ。
しかも、その間の旅の費用は思った以上にかかった。
侍女、護衛、御者には危険手当付の給金を保証していたし、宿泊費や食費も11人分となる。
馬車の修理、馬の交換などもあった。

国と教会の支援なく、聖女の活動を支えるのがこれほど大変だとはグリーン伯爵は思ってもみなかったのだ。
 
近々戻ることを手紙で知っても、少し休んだらまた旅立つと言うであろう娘を、どうやって留めようかと痩せるほど考えた。
 

「ゆっくり湯船に浸かって疲れを癒してらっしゃい。準備はできているわ。」

「ありがとう、お母様。」


アドリアナが自分の部屋に行くのを見送った両親は、本人の前では口にできなかったことを言った。


「10歳くらい歳を取ったように見えたぞ?」

「綺麗だった髪が、短くなって、パサパサになっていたわ。」


貴族令嬢とは到底言えないような姿になっていた娘に、グリーン伯爵夫妻は衝撃を受けていた。


「もう、旅に行かせてはいけないな。」

「ええ。王都にいればいいの。この三年で、どれだけの貴族に冷たい目で見られたことか。」


何の得にもならない平民を百人治癒するよりも、貴族一人を治癒した方が感謝されるし見返りもある。
そのことに気づいたのは、アドリアナが旅立って少しした頃だった。

戻って来てほしいと手紙を送ったこともある。
だが、アドリアナは先に進むことを選んだ。

 
「いっそのこと、王命で王都に留めてもらいたいくらいだな。」


国王陛下も、息子と結婚するはずだった令嬢が亡くなったことに心を痛めていた。
王子殿下はしばらく塞ぎ込んでいたそうだ。
今は新たな婚約者と前を向いているようだが。 

せっかく誕生した聖女が王都にいないのであれば役立たずと同じだ、と聖女を批判する声もあり、グリーン伯爵夫妻は外出を減らしたこともあったほどだ。

しかし、聖女が戻ってきたとなると、いざという時は縋ってくるものだ。

その機会が増えるほど、聖女の名誉も回復するに違いない。

王都にいてこそ、聖女はもっと称えられるのだと、グリーン伯爵夫妻は考えを改めたのだ。 

 
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