聖女の後悔

しゃーりん

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国王陛下に、なぜグリーン伯爵の戯言に耳を貸したのか問うと、深いため息をついてから答えた。


「実はだな、ジークハルトに妻と子がいると知った聖女が、聖女の力を失ったのだ。しかし、聖女がお前の妻になれば力は戻るとグリーン伯爵が言うのでな、それに、お前も喜ぶはずだと言うから、試す価値はあると思ったのだ。」


やはり、アドリアナは聖女ではなくなっていたのか。そんな気がしていた。
 

「試しても無駄です。アドリアナ嬢が聖女に戻ることはできないでしょう。」


ジークハルトがそう言うと、アドリアナが叫ぶように言った。


「どうして?きっと、大丈夫。あなたが側にいてくれたら。だから、ルーナ様ではなくて私を愛して?」


ジークハルトは首を横に振った。


「僕はルーナを愛してる。君を愛することはない。そもそも君は、相手が僕である必要はなかったはずだ。結婚したいなら聖女の君なら相手はいくらでもいただろう。なのに、なぜ僕だったか。それは、君がルーナに嫉妬したからだ。」
  

だから、聖女の力を失ったんだ。
 

「嫉妬?」

「ああ。君は聖女にならなければ、僕と結婚していた。君がいるはずだった場所にルーナがいる。そう思って嫉妬したんだ。そして羨ましく思った。そうだろう?」


アドリアナは狼狽していた。
それはそうだろう。
彼女とは無縁の感情だったのだから。 


「婚約していた間も、ルーナはうちによく出入りしていた。普通だったら婚約者の近くに異性がいれば警戒するが、僕の近くに彼女がいても、君は彼女に嫌な感情を持っていおらず、仲良くしていた。その頃は、嫉妬という感情を君は持っていなかったから。」


純粋なアドリアナは、ジークハルトがルーナを幼馴染だと紹介すれば違和感を覚えなかった。
その時に嫉妬という感情が芽生えていたら、アドリアナは聖女になれなかっただろう。


「君は僕との婚約を解消する時、笑顔で別れて行った。あの時の君は僕に未練などなく、聖女としての活動に意欲的で早く旅に出たいといった感じだった。この三年間、僕を思い出しもしなかっただろう?」 


ジークハルトのことは気にならないほど、アドリアナは聖女であり続けたはずだ。


「嫉妬も、羨望も、未練もなかったから、以前の君は聖女になれたんだ。」


ジークハルトの言葉に、国王陛下もハッとしていた。


「旅の途中から、聖女の力が不安定になったそうだね?おそらく君は、後悔を覚えたんじゃないか?」 
 

旅を共にした護衛から聞いた。
治癒を望んでいない者にまで治癒を施し、暴言を吐かれたことがある。
王都で聖女の悪口が言われていると聞き、聖女とアドリアナを切り離しているようなことを言っていた。

それを聞いた時、アドリアナが新たな感情を覚えたことで、聖女の魔力がブレ始めたのではないだろうかと思った。
 


 
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