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しおりを挟むアレクシスは、昼間にあった第二夫人候補ララベルとの一部始終を妻フローラに教えた。
「……お義母様がご存知なかったとは思えないわ。」
「伯爵夫人の実家は質の高いエメラルドの産地だ。対価はそれだったのではないかと思う。まぁ、破談になったから手に入らないだろうがな。」
娘が男共の性欲処理の遊び相手になっている事実を伯爵夫人は継母レベッカから聞かされたのだろう。
そして、アレクシスの第二夫人となって子供を産むために侯爵家に籠ってしまえば、当分表に出てくることはできない。
ララベルの醜聞が親世代に広まる前だから、伯爵夫人は父を騙せると思ったのだろう。
まさか、アレクシスが知っているとは思わずに。
うちは別に貧乏ではない。
裕福な方だから、エメラルドでも何でも手に入れることはできる。
継母がエメラルドを身に着けることはあるが、それはこの侯爵家の家宝であるため、継母個人の物ではない。
エメラルドは父の目の色だ。
父も、継母との婚約時代や新婚時代にエメラルドを贈ったことはあるだろう。
だがおそらく、母を愛してからはエメラルドを継母には贈っていない。
今更、若い頃のデザインの宝石を身に着けるには侯爵夫人として恥ずかしく、しかし父にエメラルドを贈ってほしいとも言えないのだろう。
夫の目の色の宝石は贈られるものであって、自分で買うものではないからだ。
伯爵夫人から贈られたエメラルドを、父と揃いのデザインのアクセサリーに仕立てたかったのではないか。
そういう乙女心を素直に見せていれば、父も継母に嫌気がさすことはないかもしれないのに。
アレクシスには冷たい態度、フローラには口うるさく貶す態度を隠しもしないから、父はいつまでも母を忘れられないのだろう。
「さすがに次の第二夫人候補も訳あり令嬢を選んだら、継母は父の反感を買うだろうな。」
むしろ、そうしてくれたらアレクシスは自分で第二夫人を選べるようになるだろう。
だが、継母は自分の立場を守るためには同じ轍は踏まない。
そうなると、継母に媚びを売る令嬢だが比較的まともな令嬢を選ぶのではないかと思った。
継母と仲良くなるのは構わない。
フローラを第一夫人、自分は第二夫人だと弁えてくれる令嬢であれば。
「私はアレクシス様の第二夫人がどんな方でも構いません。アレクシス様が私を疎ましく思わない限り、お側にいたいだけです。」
フローラは決してアレクシスの愛を望んでいるわけではない。
アレクシスはこの三年間、閨の睦事としてでもフローラに愛を囁いたことなどないのだ。
かと言って、次期侯爵夫人の座を手放したくないから離婚を選ばなかったわけでもない。
いつか、修道院に入ることになるかもしれないが、アレクシスが見放すまでは今のままでいようと思っているだけだろう。
継母にきつい言葉を言われようと、暴力を振るわれるわけでもない。
アレクシスが冷遇しているわけでもない。
子供ができなくとも、居場所がある限り、そこにいる。
それが、妻の選択なのだろう。
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