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26.
しおりを挟むカイトは侍従のマールと共にコールマン伯爵領へと戻った。
「お帰りなさい。無事に帰ってきてくれてよかった。」
「ただいま。兄に護衛を借りて一緒に行ったけど、そんな力ずくなことは何もなかったよ。」
少し見ない間に、更に大きくなったように感じるジュゼットのお腹に触れて、何事もなく帰ってこられたことに安心した。
ソファに座り、セバスとのやり取りの話をした。
「セバスに頭がおかしいんじゃないか?って言ってやったよ。」
「そうね。彼の旦那様がどなたかは知らないけれど、主人が変だから彼も変なのよ。」
確かに、監禁して産ませた子供を自分の妻の子供と偽ろうとしている主人なんだから変だよな。
セバスも主人と思考が似てしまったのかもしれない。
「セバスも思い違いに気づいたようだったから、もう何も言ってこないよ。」
セバスが御父上とジュゼットを陥れた方法を聞けば、あの主人は猛烈に怒るだろう。
あの堅苦しい男が犯罪行為を許すわけがないのだ。
妻以外の女性が産んだ子供を妻の子供として届け出ることも犯罪には近いが、子供を庶子にしたくない貴族になくはない。
妻の了承が必要にはなるから難しいが。
今回の場合は不妊などが理由で妻の希望だった可能性も高いし。
そして、再び穏やかな日常が戻ってきた頃、ジュゼットは男の子を出産した。
産まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱いて、今度こそ母になれたことを喜んでいるようだった。
ジュゼットが出産する少し前、セバスは旦那様のために用意した女性をジュゼットを監禁していた場所に同じような準備をして連れてきた。
彼女は子爵家の次女。
ある貴族家で働いていたところを金で雇った。
彼女は遊ぶ金が欲しそうだったから、すぐに話に乗ったのだ。
『ワンピースじゃなくてドレスもほしい』
『契約が終わったときは全部持って帰る』
『有名店のお菓子が食べたい』
『メイド一人じゃ退屈。友人呼びたい』
叶えられることと叶えられないことがあるが、なるべく希望に沿うようにした。
タイミングよく、月のものの最中に連れてくることができて、妊娠していないことは確かだ。
1週間後から3日間、最初の仕事が始まることを説明した。
目隠しと手を縛ることを伝えると、『そういうプレイが好み』だと勘違いされた。
契約時に相手が誰だかは教えられないと伝えたというのに。
彼女みたいなタイプはいたずら心で旦那様の仮面まで取ってしまいそうなので、厳重に縛るように伝えた。
そして閨事の日、旦那様は難しい顔をして戻ってこられた。
「セバス、あの女性は本当に前の女性なのか?」
「前の女性、というか、前の条件に合った女性、ですね。」
「……ということは、前回とは別の女性なのか?」
「はい。条件には合う女性なので問題ないと思ったのですが。」
「どうりでおかしいと思ったんだ。
随分と経験がありそうな感じだった。
あれから経験を積んだのかと思っていたが、どうも挿入した時の感じが違いすぎてな。
不快に感じて抜こうとしたんだが、脚を巻き付けられて中に出してしまった。
明日からは向かわない。
次の月のものが確認でき次第、帰ってもらえ。」
「お気に召しませんでしたか?前と同じく未経験の令嬢をご希望で?」
「え、ああ。いや、どうだろう。……前回の女性はどうしているんだ?」
「彼女はご結婚されておりました。」
「……結婚。そうか。なら仕方がないな。次の女性をどうするかは考えることにする。」
「かしこまりました。」
セバスが連れてきた2人目の令嬢は、旦那様のお気に召さなかったようだ。
実はセバスも、シーラも、だったが。
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