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しおりを挟む聖堂の建設が大急ぎで始まることになった。
いつまでもミミの中にいるわけにはいかないので、リリスティーナは一旦出ることにした。
(お嬢様、ミミは構いません。ずっといてください!)
(ダメよ。それにどんな風に聖堂が建てられていくのか、ずっと見ていることができるのよ?それも面白そうだと思わない?週に一度くらい、姿を見せてくれたら嬉しいわ。伝えたいことがあればその時にミミの中で聞くから、ね?)
今、ここはクレベール公爵家の屋敷内。
あの研究施設のあった敷地の外で、ミミの体からリリスティーナの精神が出たら、本当にあの場所に戻るのかどうかも試してみたかった。
万が一、消滅することになれば、それはそれで構わない。
しかし、そう言えば両親たちはここでミミから出るのは反対しそうだったので、そのことを告げずにミミから出ることにしたのだ。
「じゃあ、またね。」
リリスティーナはそう言って、家族の前でミミの体から出た。
一瞬にして、リリスティーナは今はまだ何もないあの敷地にいた。
やはり、精神はここに戻るらしい。
どこで誰の体から出ても、500年はここから逃れられないということがわかった。
父が国王陛下から聞いた極悪犯の話からも、消滅せずに戻るであろうことはわかっていた。
二人目の男が違う牢で正気に戻ったのに、三人目の男が極悪犯に乗っ取られていたのだから。
どこで乗っ取った体から出ても、精神は術の施されている場所に戻るのだろう、と。
それでも、何か苦痛が伴ってこの場所に戻るのかと思ったりもしたが、何もなかった。
それはそうだ。苦痛に感じる体がないのだから。
一気に寂しさを感じた。
独りぼっちである。
精神体でも、あちこち彷徨えるのであれば、見るところはいろいろあるのに、ここから出られないリリスティーナは何も見るものもない。
あのアホバカマヌケ殿下はなぜ、王都から出られないような術にしてくれなかったのか。
こんな小さな敷地ではなく王都内ということであれば、もっと楽しめたかもしれないのに。
そして気づいた。
精神体であるときは眠らないということも。
そう言えば、死んだ日の夜も寝ることはなかった。
眠るという発想もなく、ただただ研究施設内をウロウロと彷徨っていた。
敷地内から出られないことに気づき、術が施された痕跡を見つけて、アホバカマヌケ殿下にひたすら腹を立てて一晩を過ごしたのだ。
……眠れないって暇すぎない?
これで500年はつらすぎる。
聖堂ができて、昼間に体を貸してくれる女性が見つかっても、夜は精神体で過ごすことになる。
誰か聖堂に常駐してもらって、中で眠らせてもらおうかしら。
夜に独りぼっちがこんなに寂しいとは知らなかった。
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