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しおりを挟むクローヴィスがなぜ今、自分の気持ちや考えを話したのかはすぐにわかった。
子供たちのためである。
治癒を使えるようになったアリアローズは使わないように言っても理解することは難しい。
レイノルズに関しても、いつどう使ってしまうかわからない。
聖力のことをよく知らないクローヴィスには不安でしかない。
さらに、出産を控えているセレンティナは身動きが取りづらくなるため、子供たちを見守れる体制を密かに取りたいのだ。最小限の者と可能な範囲で話を共有すべきだと。
もし、セレンティナがまだ話したくなくても、子供たちの守りは厚くするという宣言だろう。
ここまで言われて、何も認めないわけにはいかなかった。
「ええ。あなたの推論は正しいわ。私はリリスティーナ。でも、セレンティナなのよ。」
クローヴィスは怪訝な顔をした。
「セレンティナを乗っ取ったということだろう?」
「今までは聖女である間だけ体を借りていたの。聖女だった時も時々は本人に返したりもしていたわ。
その間は他の聖人の体を借りたりして。」
イボンヌにだけは一度も体を返したことはなかったけれど。
「今までと今の違うところは何だ?聖女として治癒する生活ではなく、結婚して子供を産み聖力を繋げていくことを選んだ以外に何か?」
「そうよ。結婚して子供を産んで死ぬまでセレンティナとして暮らすの。あなたたちと。」
「……元のセレンティナは?」
「体が最期を迎える時まで、眠っているわ。」
「彼女の意思で?」
「ええ。あの子は人が怖かった。結婚前に死ぬ覚悟をしていたの。」
「……そこまで思い詰めていたのか?いつも怯えているようには見えたが。」
「あなたのせいじゃないの。昔からの積み重なりね。私も癒してあげられなかった。」
「そうか。可哀想にな。ではずっと君のままなんだな?」
「ええ。」
クローヴィスはどこかホッとした様子だった。
「元のセレンティナには悪いが、私が愛しているのは今のセレンティナだ。確かにセレンティナの美しさに一目惚れはした。だが内面は君が好きだ。だから、このままでいてほしくて……」
クローヴィスも葛藤したのだろう。
いつ、セレンティナの中身が変わるかわからないと気づいたのなら。
だから、愛しているのが今のセレンティナで、自分を信頼して一緒にいてほしいと言っているのだ。
元のセレンティナに申し訳ないと思っているらしいが、責められるべきはリリスティーナである。
「騙していてごめんなさい。あなたや子供たちを利用しようと考えたことも申し訳ないと思っているわ。
でも、これは聖力を授かった者としての役割ではないかと思ったの。」
「役割って、聖力を持つ子供を産むことが?」
「ええ。リリスティーナに聖力が授けられたのは婚約者が瀕死の時だったの。婚約者を助けて、結婚して子供を産む。
当時の婚約者は王太子だったから、聖力を持つ子が王族から貴族へと繋がっていくように授けられたのだと思うわ。
それなのにリリスティーナは死んでしまって、その後も聖力を持つ人は現れない。」
「だから、結婚して子供を産んでみようと思った?」
「そうよ。ひどい女よね。」
確証も何もない、単なる思いつきの手段にすぎなかったのだから。
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