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侯爵令嬢マーリアは足早に王城を歩いていた。

向かう先は、王太子の執務室の近くにある部屋。
おそらく、今の時間は休憩としてみんなで話をしているはずだ。

部屋の前には騎士がいた。間違いない。ここにいる。

何度も来たことがあるマーリアの顔を見て、中に取り次いでくれた。




「マーリア、どうした?急用か?」

婚約者である侯爵令息ミカルディスが聞いてきた。

「ええ。あなたに確認したいことがあってね。皆様にも。」

ソファにいる王太子たちを半ば睨みながらマーリアは告げた。


「…なんだか怖いな。どうしたんだ?」

「先ほど、我が屋敷にネリリ嬢が訪ねて来ました。子爵令嬢の。」

そう述べただけでミカルディスの顔は真っ青になった。

「あら。真っ青よ?では彼女の話は事実なのね?」

王太子たちも顔が引きつっている。

「マーリア、説明させてくれ。」

「どうぞ?彼女の話と比較するわ?」

「俺は、ネリリ嬢を助けたんだ。そう、人助けをしたんだ。」
 
「それで?人助けだって誇っているの?ならなぜ真っ青なの?」

「……それは、人助けでもマーリアを裏切ったからで…」

「あら。やましいと思ってるからではなくて?皆様はどうお考えなの?あれは人助け?」
 
「…そうだと思ってしまった。すまない。」

王太子が答えた。あなたにも責任があるのよ?

「侍医に見せるわけでもなく、請われるままの人助け、ね?」

「………………」

誰も声をあげない。

「侍医を呼べなかった状況だったとしても………
 この中には婚約者がいらっしゃらないデニー様もいらっしゃいますよね?
 なのに、私という婚約者がいるミカルディス様が相手をした。
 それをあなたたちみんなが笑顔で見送ったそうね。」

「指名されて、仕方なく………」

「そう、仕方なく、ね。彼女の言うことと違うわね?」

「…彼女は何て?」

「あら、聞きたい?最中の会話まで教えてくれたわよ?
 強請った純潔の彼女の要望に応えて、2回も中に、ね。」

王太子たちも息を飲んで驚いている。そこまで聞いていなかったのだろう。

「彼女はね、『避妊薬を飲まなかった』と言いに来たの。
 あれから5日経った。今更、避妊薬は効かないってね。
 しかも、妊娠しやすい日だったそうよ?意味わかる?」

ミカルディスは気分が悪そうだ。情事を聞かされたこっちの方が気分悪いわよ! 

「…仕組まれた?」

「ええ。帰るときに避妊薬を飲むように言ったそうね?甘いわ。
 目の前で確実に飲んでもらわないと。
 もし、彼女が妊娠していたとして、確実にあなたの子だと言える?
 この5日の間に他の男に抱かれていたら?
 でも、あなたは責任を取るしかないの。」


「責任って!俺には君が………」


「両親も一緒に話を聞いたの。あなたを許さない。
 そして王太子クロノス、私はあなたの側妃になるわ。それがあなたの責任。」

 






 
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