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マーリアが王太子の側妃になった日、ミカルディスとその両親は屋敷に戻ると話し合った。
「ミカルディス、過ぎてしまったことはもうどうしようもない。問題はこれからだ。」
父が言うことは理解している。後悔しても取り戻せない人を失った。
しかも、悔やむことに没頭できない問題が……ネリリだ。
「父上、跡継ぎをロンバートにできませんか?」
ロンバートは弟だ。婚約者の家に婿入りする予定だった。
「先方の下の令嬢にはまだ婚約者がいなかったと思うので大丈夫だとは思う。いいのか?」
「私にはマーリアと侯爵家に対して罪があります。公表されなくても。
それに、ネリリ嬢を侯爵夫人にはできません。
兄が子爵令嬢と結婚したいので、侯爵令嬢を婚約者に持つ弟が跡継ぎとなる。
妥当だと思われるのではないでしょうか。」
「……そうだな。お前はどうする?王太子殿下の側近をこのまま続ける気なのか?」
自分の妻になるはずだった人が仕える御方の妻になった。わだかまりなく仕えられるか……
「仕事はまた別です。大丈夫です。」
「わかった。では、領地のない子爵位をやろう。側近に爵位がないのはつけこまれるからな。」
「ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
ネリリは近日中にはやってくるだろう。
そして、自分と結婚するように言うはずだ。
責任を取って、結婚はする。
未来の侯爵夫人ではなく、名だけの子爵夫人になるけどな。
侯爵夫人を狙ったのか、俺個人の妻になりたかったのか。
どちらかで夫婦としての接し方が変わるだろう。
侯爵夫人になりたくて、純潔を捨てて妊娠を狙った。
もしそうだとしたならば、妊娠していれば子供に罪はないので育てる。
しかし、妊娠していなければネリリの子供は一生作らない。
俺個人の妻になりたくて、妊娠まで仕組んだとしたのなら……
たとえ俺が子爵になろうが平民になろうがついてくるというのなら、やり方は許せないが夫婦として向き合っていきたいと思う。
さて、君はどっちかな?
翌日、父はロンバートの婚約者の家と話し合った結果、嫁ぐことを了承してもらえたようだ。
相手の家は妹が継ぐ。
これで準備はできた。
いつ、ネリリが来ても、うちの侯爵家の跡取りは弟で、兄の俺は王城勤務。
あの日のたった数十分での出来事で、何人もの未来を変えてしまった。
ネリリだけが悪いんじゃない。俺にも思い上がりがあった。
美しいマーリアが婚約者になった。
何人もが羨ましがった。
マーリアに優しくしたかった。大切にしたかった。
だけど、自分がマーリアに侍るのは嫌だった。
結果、溺愛するでもなく邪険にするでもなく、淡々とした婚約者同士。
誰から見ても、いかにも政略による婚約…より少しマシみたいな付き合いだった。
側近仲間との集まりでお互いの婚約者や妻とも度々会う機会もあり、マーリアも参加してくれた。
他の奴らみたいに恥ずかしがらずに密着したかった。
結婚すれば、いつでもできる。
言葉や態度で示さなくても、いずれはマーリアは俺のものになるのだから。
そんな思い上がりがネリリにつけこまれる一因だったのかもしれないな。
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