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第四章

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 動物園の中を巡り歩くと、ガラス越しにホッキョクグマを見る事が出来たり、ペンギンの泳ぐ姿を見たり。
子供の様に気分は高揚してしまい、美乃利さんや佐伯さんと一緒になって声を出してしまう。
動物を間近に見たのは初めてかもしれないと思う程興奮していた。

「冬になるとペンギンのお散歩とか、すっごくかわいい姿も見られるから、又来ましょうよ。」

 美乃利さんに云われて「ああ、是非見たいなぁ。」と云ってしまう。

「その時は私も誘ってよね。」と、佐伯さんは美乃利さんの腕にしがみ付いて、「分かった分かった、絶対誘うから。」と少し苦笑いをしながら美乃利さんが云った。
なんとなく行きたいと云ってしまった僕は、東京から旭川までの道のりを考えたら後悔した。
そうそう簡単に行ける距離じゃないし、現実には難しい話だ。

「美乃利さんたちは地元だから、頻繁に来られるでしょう?」

 二人の姿を微笑ましく見るとそう云った僕だったが、子供の頃はそれなりに楽しめたけれど、大学生になったら他の事が忙しくて中々遊びには来られないという。
今回は、僕のような従兄が来たおかげで遊びに来る気になったらしい。

 そう訊くと、確かにそうかもしれないと思った。
もし僕が美乃利さんに東京を案内するとしたら、自分はあまり行かないけれど、誰もが知っている場所を案内するだろう。

「いつか東京に来る事があったら、その時は僕が色々案内するから。」

 そう云うと、美乃利さんは嬉しそうに微笑んで「よろしくお願いしますね。」と首をコクンと下げた。



 観て周るのに時間がかかってしまい、半分も見学は出来なかったが、閉園の時間も近くなると僕たちは帰途に着く事にした。
佐伯さんとも園の駐車場で別れると、また美乃利さんの運転で車は来た道を戻って行く。
半分覚悟を決めていた僕は、この命を彼女に預ける気持ちで助手席のシートベルトを握りしめた。

* * 

 無事に家までたどり着くと、既におばさんは夕飯の準備をしていた。
僕らの顔を見ると、「どうだった?動物園楽しかった?」と訊いてきて、僕はちょっと子供の頃に返った様な気がした。母親も、僕がどこかへ出かけて帰る度にこうやって訪ねてくれたのを思い出す。

 美乃利さんと二人で、観てきた動物の事を話しながらおばさんの手料理を待つ間、まるでここが自分の家の様な気さえして、家族の有難みを感じてしまう。

 東京へ帰らなければいけないが、なんだか少し寂しい様な気分になる。


 それから間もなく、僕はおじさんの家を後にして東京へと戻る事になった。

 美乃利さんも僕に付き合って実家に残ってくれたが、僕が帰る日に自分もアパートに戻ると云った。
アルバイトもあるそうで、おじさん達は一気に寂しくなると悲しそうな顔つきになるが、僕がまた来る事を心待ちにしていると云ってくれて、互いに握手をするとお別れを云った。

 結局、母の子供の頃の状況は垣間見れて、あの原稿用紙だけが現実に起こった事を物語った。
しかし、謎は残ったまま。お地蔵さまの事はこれ以上分からないだろうと思う。



 
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