✖✖✖Sケープゴート ☆奨励賞

itti(イッチ)

文字の大きさ
35 / 36
第五章

スケープ ゴート

しおりを挟む

 僕は思った。
三人しかいない家族が、父を亡くした事で二人きりの家族となり、僕にも話せない過去をいっぱい背負ってしまった母。
父の写真も思い出も僕には見せない事で、母は背負った過去を葬りたかったのかもしれない。そんな事を知らない僕は、母の苦しみを分かってあげられなかった。

 自分の死を悟った時、弟の亮さんには何かを伝えたかったのだろう。でも、全てを打ち明ける勇気はなく、あの手紙に綴った様な不思議な文面になってしまった。


「母は、ひょっとしたら僕に過去を見せたかったのかも.......。意味不明な手紙をおじさんに残す事で、必ず僕のところにおじさんが来ると確信していた。そして、真壁家の過去も浮かび上がらせる事で、何かを伝えようとしていた。そう思いませんか?」

 水野さんに訊ねてみるが、表情は曇ったまま。考えあぐねている。

「........そういえば、奥村くんの従姉妹。彼女は何も知らないでしょ?」

「あ、.....はい、もちろん知りません。ただ、一緒に母の原稿を読んでしまいましたから、気にはなっているはず。今は実家を出て一人暮らしをしていますが......」

 少し気になる。美乃利さんが母と同じような体験をした事。今のところは誰も亡くなってはいないが.......。

「お母さんの過去を話すのは、奥村くんには辛い事だと思う。でも、彼女も残された真壁家の女性なら知っておいた方が良くない?」

「........それは、......確かにそうですが、.......」

 正直、なんと伝えればいいのか。


 日記を数ページ残したところで、水野さんと二人考え込んでしまった。

 両親を事故死させてしまったと思っている母のことを伝えるべきか。おじさんはきっとショックを受けるだろう。母を恨むかもしれない。やっと見つけた僕の親戚を失う事になるのは辛い。

 でも、今後また不思議な事が起こった時に、傷つくのは美乃利さんだ。せめて彼女にだけは伝えなくては。

「うまく伝えられるか分かりませんが、手紙を書いてみます。そして、いつか出会う事があれば、この日記もみてもらいます。」

 僕は覚悟を決めて水野さんに云った。

「そうだね、それがいいと思うよ。」

 一言そう返事をすると、もう一度日記に目を落とす。


[ 祐二が成長して、怪我や病気になったとしても、私はこの子の無事を願えない。その願いは誰かを生贄にしてしまいそうで怖い。だから、せめてお金を残してやりたい。この子に一番の治療が受けられるように。そして、それが叶わない時は、私が祐二の命の代わりになろう。祐二がこの先受ける災いは、全て私が引き受けたい。もしもお地蔵さまに願いが届くなら、どうか叶えてください。 ]



 日記の最後はこう綴られていた。僕が1歳の誕生日を迎えた日に、母はこんな願いを残していた。


 僕のスケープゴートになろうとした母。
自分の健康を過信していたが、これは全て母がくれたものじゃないか?若すぎる母の死を嘆いた僕だったのに、もしかしたら母の命を削らせてしまったのかもしれない。そう思うと、深い後悔の念に苛まれる。

「母親ってさ、辛い時には子供の身代わりになれたらって、そう思うものよ。世の中の善良な母親ならみんなそう。もし、私に子供がいたら、きっと奥村くんのお母さんのように祈ったと思うよ。」

「水野さん、.........優しいですね、.......」

 水野さんの言葉に救われた気がする。僕を慰めてくれたんだろうが、でも、僕が父親でも同じように願うかもしれないと思った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

私の優しいお父さん

有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。 少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。 昔、私に何があったんだろう。 お母さんは、どうしちゃったんだろう。 お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。 いつか、思い出す日が来るのかな。 思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...