25 / 60
子供部屋に
しおりを挟む祐二たちは2階に上がると、部屋がどうなっているのか見渡した。
まず見えるのはすぐ前の部屋の扉。その左隣にもう一つの扉。そして左後方に一つ。計三つの部屋が2階にはあったが、廊下の窓から漏れて入った明かりが不気味に静かな空間を照らすと、一同の顔も曇った。
「じゃあ、奥の部屋から見て行きますか」
祐二が言って、みんなは後に付いた。床がギシッという鈍い音を立てるたび、美乃利は一々肩を上げて水野の服の裾を握った。
佐伯も山里も言葉が出て来なくて、微かな息遣いだけが聞こえる。
ガチャリ、とドアノブを回して開けた奥の部屋。とはいえ、ここは道路側に面した部屋になっていて、剥き出しの窓ガラスから外の景色が見える。今は夜なので暗いが、昼間は明るく陽の光が入るのだろうと想像できた。
室内はベッドがふた組。全身の映る鏡があって、箪笥の横に立て掛けられている。床には布団やシーツが乱雑に落ちていて、元々この状態だったのか、それとも誰かが入ってこんな風にして行ったのか分からない。懐中電灯で照らして見える壁や床は築年数の古さを物語る。
「ここ、十何年か前には人が住んでいたんだよね。亡くなった後で家具とか処分する人は居なかったのかな。親戚とかさ」
水野がため息混じりで言った。
「そういう遺品整理ってお金も掛かるし、いくら親戚が居てもやりたくないでしょうね。」
祐二は自分が母の遺品を整理した時の事を思い出していた。ダンボール箱をいくつか捨てるだけでも、思い入れのある品を手放す切なさを味わった。未だにタンスなどは処分出来ていない。
「次の部屋に行ってみる?」と佐伯が言って、皆は顔を見合うとそこから出て行く。
隣の部屋を開けると、ムッとしたカビ臭い匂いに祐二と佐伯は鼻と口を手で塞いだ。
「何これ、この部屋カビ臭い」と、水野は後退り。美乃利も廊下に立ったまま祐二と佐伯を見ていた。
「ちょっと、あれ」
そう言って山里が懐中電灯を向けた先には、白木で出来た祭壇の様な物があった。何か見たことのない模様の描かれた布が貼ってあり、その前に燭台や白い陶器の器がいくつか置かれている。燭台は溶けた蝋がこびりつき歪な形で、敷かれた布の上には埃が積もっていた。
「ここは窓が無いのか?」
確かに佐伯が言った通り、この部屋には窓がない。部屋の広さは6畳ぐらいなのに、祭壇の他には隅の方に布団のような敷物が無造作に畳まれたまま。壁にも何か文字の書かれた紙が貼ってあるだけ。ちょっと不気味に感じると、祐二たちは部屋を後にした。
「最後にこの部屋。ちょっと開けるのが怖いですね」と、2階に上がった突き当たりの部屋のドアに手を掛ける山里は言った。
隣のカビ臭い部屋を想像すると、祐二もそう思う。
「開けます」と言って山里が部屋のドアを開けると、そこは誰が見ても分かる子供部屋だった。
カーテンは千切れているが、ピンクの花柄の模様が目に映る。シングルのベッドに背の低いタンス。机はないが折り畳みのテーブルが脚の壊れた状態で隅に置いてある。そして、開け放たれた押入れの中には、布団やランドセル、ぬいぐるみなどが入っていた。
「ぬいぐるみ、ゲーセンで取るような物じゃないね。ちゃんと手作りしいてあるっぽい。ほら、足の裏に刺繍とか」
水野がそう言うと、ひとつを手にとって見せた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる