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書き込み
しおりを挟むコーヒーを飲み終えて少し静かになると、これ以上店主に聞くのも失礼かと、祐二は隣の人たちの顔を見る。
「じゃあ、今日のところは….帰りますか?」と水野が腰を上げて、ようやくみんなも頷くと帰り支度をはじめた。
店主もレジの方に向かうと静かに待つ。祐二たちは自分の分の金を取り出すとまとめて水野に渡した。
それを店主に渡すと、にこやかな顔で「ありがとうございました」と言ってくれる。互いに言葉を濁す様な感じで、心中はすっきりしないが、ここは帰るしかなかった。
「ご馳走様でしたー」と、口々に礼を言うと店の外に出る。ドアのカランコロンという音がまたもや心地良く、今日の出来事を忘れさせてくれる様。山里の車に乗り込むと、祐二たちは元来た道を戻って行く。
翌日、美乃利は水野が会社に行っている間に部屋で一人過ごすが、持ってきていた自分のパソコンを開くと昨日の家の事件を調べ出す。古い記事を漁っていくと、2チャンネルの書き込みを見つけた。
食い入る様に画面を見つめる美乃利。ずーっとスクロールしていくが、ひとつの記事を目にすると指が止まる。
そこに書かれていたのは、喫茶店の店主が言い渋った父親の事だった。
事件の後から後から誹謗中傷の書き込みが目立った。子供の事を書いている記事もあり、ホントかウソか小学校での彼女の噂まで。
なんだか見ていて気分が悪くなりそうだが、美乃利は父親の記事を読んでいくと、何やら宗教めいた噂話も書かれている。例の家で見た祭壇は何かの祭事に使われていたのか。ただ、宗教の名前は書かれておらず‘おかしな宗教’としか書かれていない。
それは昔からあの辺りに伝わっていたらしいが、昭和の頃はやはりあの辺りは村だったらしい。山里が見つけた看板はその名残か。
噂話によると、父親は家族にDVをしていたらしく、酒癖も悪く仕事もしていたかどうか。一家心中に至った経緯は、どうも母親が先行きを苦にして農薬を混入した酒を夫に飲ませ自分と娘も後を追ったとされている。
書き込みの中には、あの土地の呪いだとか、祟りみたいな言葉も多かった。昔の事を知らずに中古物件の家を買ったという人まで書き込んでいて、騙されたとまで言っている。結局、住む人もどんどん居なくなり、あそこの家だけが残った様だ。
それにしても、と美乃利は思った。命を取り留めた少女の事までどうして悪く言うのかと。一定の人しか見ないとしても、これでは可哀想だ。父親から暴力を受けていたのなら、どうして助けられなかったのか。小学校にも通っていたのに………。
ふと、あのテディベアが目に浮かんで、彼女にはあのぬいぐるみが一番の友達だったのかも、と思うと悲しくて切なくて。
ひょっとして、岬さんもこういう書き込みを読んだんだろうか。もしそうなら、彼女はどういう行動を起こすだろう。
想像するが、高校時代の自分が見ていた岬とは思えない事があきらかになって、美乃利は戸惑うばかりだった。
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