物言わぬ家

itti(イッチ)

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押入れの落書き

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『…..今、私がいる所は何処だと思いますか?実は、ここはとある一軒家ですが、この家の家族は一家心中をはかって誰も住む人はいません。』
 画像には、岬の首から下が映されていて、あの家の玄関前で撮られた映像だとわかる。岬が一人で話しながら家の裏手から中に入って行く場面で、一旦画像はストップした。

「岬さん、一人で動画を回してたんだね。でもさ、これって不法侵入になるじゃない?」
 そう言ったのは水野。確かに許可を取っている訳ではないので、このまま流せば問題になるだろう。
皆で顔を見合わせていると、場面が変わって撮影が続いていて、また一斉に画像を見つめた。

『はい、それでは検証したいと思います。どうしてこの一家は心中をしたのか。この家のリビングで農薬を飲んだらしいですが、それを入れたのは母親らしいですね。後で2階を見せますが、この家、変な祭壇があるんですよ。どうやら宗教に嵌っていたようで、どんどんおかしくなっていったみたいです。それと、この辺りはすごく昔ですが処刑場だったらしくて、そういった意味では忌み地と呼ばれている場所でもありました。その影響もあったのかも』
 そこでもう一度画像はストップした。

   暗い部屋に、ぼんやり浮かぶ灯りが不気味。演出もあるのか、部屋の中心に置かれたランタンのせいで、辺りもうっすらと見えている。
  あの夜はリビングを詳しく見なかったが、壁に貼られたカレンダーとは別に、何か咒(まじない)の様な文字の書かれた紙が貼ってある。

「何なの、アレ。祭壇にもああいうのあったよね」
  水野が顔を引きつらせる。
祐二も眉間に皺を寄せ、画面を食い入るように見つめた。

『それでは、2階の部屋ですが』
  岬はそう言うと、階段上がってすぐの部屋、子供部屋の扉を開けた。
目に入るのは、ピンクの花柄のカーテンとランドセル。
不気味な雰囲気の中で、此処に子供が生活をしていた事が異質に感じた。そして、例のテディベアのぬいぐるみが並んだ押し入れの棚。やはり7体のぬいぐるみがあり、後で岬がひとつ持ち帰ったのだ。

『ここは子供部屋みたいです。ランドセルはそのまま。女の子が居たんですけど、その子は命を取り留めて今は何処かで生きているはずです。可愛いテディベアが並んでますよね。なんだか、幸せに暮らしていたのに、どうしてあんな事になってしまったのか』
  
 そこを出て行くと、あの祭壇の部屋に向かった。扉を開けても、明かりは漏れてこず『この部屋が祭壇のある部屋ですが、なんと、窓が無いんですよね』と、岬が説明しながら懐中電灯で部屋を舐めるように照らした。

『これが祭壇。この祀られているのは何なのか、リビングに貼ってある紙と同じ物の様ですね。もし分かる方はDMで教えて下さい』
  灯りの中の咒(まじない)の文字が不気味だった。
チラッと映る敷布団らしき物も、何となく異様だが、岬は部屋を出ると奥の部屋にも入って行く。夫婦の寝室らしき部屋も、祐二たちが見たまま。ひと通り見て話した後、何故か岬はまた子供部屋に入って行った。

「あれ、また入ってく?」と、山里は言ったが、「あ、そうか、ぬいぐるみ持って来てたっけ」と言うと静かに見続ける。

  やはり、ぬいぐるみを手に取ると、足の裏の刺繍をまじまじと眺める。すると、『あれー、この人形、、、見た事あるかも』と、独り言を呟く声が録音されていた。そして、何故か押し入れの中をゴソゴソと探り始めた。

「え、何してるの?」
水野が呟いたが、祐二たちも同じ様に感じた。録画しながら何か探し物をする様子で、カメラは色々な場所を映すので、ちょっと目眩がしそうになる。

  しばらくして、押し入れの中の真ん中の板の裏側でカメラが止まる。と、何やらクレヨンで書かれた文字が映りこんだ。
そこをズームでとらえると、すぐに画面は真っ暗になってしまう。

  続きが始まるのかと、山里たちが息を飲むなか、結局撮影はそこで終わってしまった。



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