13 / 132
平和の象徴
4
しおりを挟む
翌日の夕方。花火大会へ向かう支度をしているところに、浴衣姿の希穂が現れた。
「はい、お披露目!」
希穂は壱弥の前でくるりと一回転して、両手を横に広げてみせた。
白地に大きなひまわりがあしらわれた、華やかな浴衣だ。昨日着ていたワンピースもそうだったし、希穂はひまわりの柄が好きだった。
髪は綺麗にまとめ、飴玉のような玉かんざしを挿している。
「どう、かわいい?」
「うん、かわいい。よく似合っとうよ」
「ときめいた?」
「ときめいた、ときめいた」
「棒読み!」
希穂は口をとがらせながら、壱弥の肩を小突く。こういうやり取りも昔から変わらず、心を和ませてくれる。
相変わらずニヤニヤと様子を眺めているナナシの姿が目に入り、昨日の言葉が一瞬頭をよぎったが、壱弥はすぐに振り払った。
「ケンは、何時に来るって?」
「香菜ちゃんを拾ってからやけん、あと十分ぐらいやない?」
幼なじみの浅倉健二と、その彼女の大石香菜が壱弥の家に迎えに来ることになっている。
筑後川に向かいながら道中で三人拾い、計七人で会場へ向かう予定だった。
ほどなくして、健二のミニバンが家の前に到着した。運転席から健二が、助手席からは香菜が降りてくる。
「うわぁ」
壱弥の姿を見るなり、健二が声をあげた。普段通りの少しゆるいストリート系の洋服を着ていて、以前会ったときより髪の色が明るくなっているようだ。
「なんだよ、うわぁって」
「いや、壱弥は相変わらずやなって。浴衣、着こなしすぎやん」
「相変わらずバリかっこよかね、壱弥くん。写真撮っていい?」
優美な藍染の浴衣を纏っている香菜が、目を輝かせながらスマートフォンのカメラを向けてくる。
スマートフォンの画像フォルダがスカスカな自分からすると、なぜこうも写真を撮りたがるのかが、いまいち理解できない。
「撮ってどうすんの?」
「思い出と目の保養よ。壱弥くんの浴衣姿なんてレアやんか。大丈夫、インスタには上げんけん」
「ねぇねぇ香菜ちゃん。こん浴衣、私が作ったとよ」
「さすが、きぃちゃん。壱弥くんの似合うもの、よう分かっとうね。てか、きぃちゃんもかわいい!」
「香菜ちゃんの浴衣姿も、めっちゃ綺麗!」
互いに褒め合いながら撮影会を始める女子ふたりに苦笑いを浮かべていると、呆れた表情でその様子を眺める健二と目が合った。
健二とは幼稚園から高校までずっと同じクラスで、希穂と同様に、勉強をするのも遊びに行くのも常に一緒だった。
互いの性格をよく理解しているので、多くを語らずとも、なんとなく意思の疎通ができる。
「樹里たちが待っとうけん、はよ行こうぜ」
壱弥の心中を察して、健二が助け舟を出してくれた。
ミニバンは七人乗りのもので、壱弥と希穂は最後方の三列目のシートに座った。そしてその間に、当然のような顔をしてナナシが座る。
もちろん希穂にもナナシは見えていないので、壱弥は素知らぬ顔をして前を向いた。
「はい、お披露目!」
希穂は壱弥の前でくるりと一回転して、両手を横に広げてみせた。
白地に大きなひまわりがあしらわれた、華やかな浴衣だ。昨日着ていたワンピースもそうだったし、希穂はひまわりの柄が好きだった。
髪は綺麗にまとめ、飴玉のような玉かんざしを挿している。
「どう、かわいい?」
「うん、かわいい。よく似合っとうよ」
「ときめいた?」
「ときめいた、ときめいた」
「棒読み!」
希穂は口をとがらせながら、壱弥の肩を小突く。こういうやり取りも昔から変わらず、心を和ませてくれる。
相変わらずニヤニヤと様子を眺めているナナシの姿が目に入り、昨日の言葉が一瞬頭をよぎったが、壱弥はすぐに振り払った。
「ケンは、何時に来るって?」
「香菜ちゃんを拾ってからやけん、あと十分ぐらいやない?」
幼なじみの浅倉健二と、その彼女の大石香菜が壱弥の家に迎えに来ることになっている。
筑後川に向かいながら道中で三人拾い、計七人で会場へ向かう予定だった。
ほどなくして、健二のミニバンが家の前に到着した。運転席から健二が、助手席からは香菜が降りてくる。
「うわぁ」
壱弥の姿を見るなり、健二が声をあげた。普段通りの少しゆるいストリート系の洋服を着ていて、以前会ったときより髪の色が明るくなっているようだ。
「なんだよ、うわぁって」
「いや、壱弥は相変わらずやなって。浴衣、着こなしすぎやん」
「相変わらずバリかっこよかね、壱弥くん。写真撮っていい?」
優美な藍染の浴衣を纏っている香菜が、目を輝かせながらスマートフォンのカメラを向けてくる。
スマートフォンの画像フォルダがスカスカな自分からすると、なぜこうも写真を撮りたがるのかが、いまいち理解できない。
「撮ってどうすんの?」
「思い出と目の保養よ。壱弥くんの浴衣姿なんてレアやんか。大丈夫、インスタには上げんけん」
「ねぇねぇ香菜ちゃん。こん浴衣、私が作ったとよ」
「さすが、きぃちゃん。壱弥くんの似合うもの、よう分かっとうね。てか、きぃちゃんもかわいい!」
「香菜ちゃんの浴衣姿も、めっちゃ綺麗!」
互いに褒め合いながら撮影会を始める女子ふたりに苦笑いを浮かべていると、呆れた表情でその様子を眺める健二と目が合った。
健二とは幼稚園から高校までずっと同じクラスで、希穂と同様に、勉強をするのも遊びに行くのも常に一緒だった。
互いの性格をよく理解しているので、多くを語らずとも、なんとなく意思の疎通ができる。
「樹里たちが待っとうけん、はよ行こうぜ」
壱弥の心中を察して、健二が助け舟を出してくれた。
ミニバンは七人乗りのもので、壱弥と希穂は最後方の三列目のシートに座った。そしてその間に、当然のような顔をしてナナシが座る。
もちろん希穂にもナナシは見えていないので、壱弥は素知らぬ顔をして前を向いた。
1
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最弱パーティのナイト・ガイ
フランジュ
ファンタジー
"ファンタジー × バトル × サスペンス"
数百年前、六大英雄と呼ばれる強者達の戦いによって魔王は倒された。
だが魔王の置き土産とも言うべき魔物達は今もなお生き続ける。
ガイ・ガラードと妹のメイアは行方不明になっている兄を探すため旅に出た。
そんな中、ガイはある青年と出会う。
青年の名はクロード。
それは六大英雄の一人と同じ名前だった。
魔王が倒されたはずの世界は、なぜか平和ではない。
このクロードの出会いによって"世界の真実"と"六大英雄"の秘密が明かされていく。
ある章のラストから急激に展開が一変する考察型ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる