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みをつくし
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「なんで笑うのよ?」
「かわいいなと思って」
澪の頬が、一気に赤くなった。
その理由が分からず首をかしげると、澪はなぜか不満げに口をとがらせる。
「なるほど、香月くんは天然タラシの要素もあるのね」
「え?」
「ううん、なんでもない。服、まだ乾かないから、とりあえずそれを着て帰って。すぐそこなら、別にいいでしょ」
突然、澪の口調が素っ気なくなり、そっぽを向かれてしまう。よく見ると、耳まで赤くなっているようだ。
「私はしっかり支度をしていくから。ほら、帰った帰った」
澪に押し出されるように玄関へ向かう。昨夜脱ぎ捨てた自分のスニーカーが、綺麗にそろえて置いてあった。
「十三時に、はな子ちゃん前ね!」
スニーカーを履いて壱弥が玄関を出ると、そう言って澪はドアを閉めた。
澪が赤面した理由はよく分からなかったが、ひとまず帰宅して、デートの支度をすることにした。
とはいえ、澪の家でシャワーを浴びてきたので、着替えるぐらいしかやることはない。待ち合わせの時間までは、二時間以上ある。
家にいると寝てしまいそうなので、着替えてひと息ついてから、周辺を散策しつつ駅近くの書店で時間をつぶすことにした。
吉祥寺は「住みたい街ランキング」で、常に上位にランクインしている人気の街だ。駅前には大型商業施設や商店街があり、買い物には事欠かない。
平日でも多くの人がいるが、週末ともなると駅周辺は特に混雑している。最初は目が回るような感覚になったが、少しずつ慣れてきた。
自宅マンションから駅に向かう道の途中に、大きな書店がある。本好きの壱弥にとっては、そこが一番のお気に入りスポットだ。
店内を物色していると何冊か買いたい本を見つけたが、デート前に荷物は持ちたくないので、取り置きをしてもらうことにした。
そうこうしているうちに、あっという間に待ち合わせの時間になったので、壱弥は駅の北口広場へ向かった。
澪が言っていた「はな子ちゃん」とは、吉祥寺駅の北口広場にあるゾウのモニュメントのことだ。はな子はかつて井の頭公園で飼育されていて、国内で飼育されたもっとも長寿のアジアゾウとして知られている。六十九歳でその生涯を閉じたあと、市民などからの募金によって銅像が設置されたらしい。
上京して二か月しか経っておらず土地勘が掴めていない壱弥にとって、はな子のモニュメントは一番分かりやすい待ち合わせ場所だった。
「あ、来てくれた」
ベンチに座っていた澪が、すぐに壱弥を見つけて立ち上がる。
髪を下した姿は初めて見たので、一瞬誰だか分からなかった。上品なフリルブラウスに、少し個性的なアシンメトリーのロングスカートがよく似合っている。
「かわいいなと思って」
澪の頬が、一気に赤くなった。
その理由が分からず首をかしげると、澪はなぜか不満げに口をとがらせる。
「なるほど、香月くんは天然タラシの要素もあるのね」
「え?」
「ううん、なんでもない。服、まだ乾かないから、とりあえずそれを着て帰って。すぐそこなら、別にいいでしょ」
突然、澪の口調が素っ気なくなり、そっぽを向かれてしまう。よく見ると、耳まで赤くなっているようだ。
「私はしっかり支度をしていくから。ほら、帰った帰った」
澪に押し出されるように玄関へ向かう。昨夜脱ぎ捨てた自分のスニーカーが、綺麗にそろえて置いてあった。
「十三時に、はな子ちゃん前ね!」
スニーカーを履いて壱弥が玄関を出ると、そう言って澪はドアを閉めた。
澪が赤面した理由はよく分からなかったが、ひとまず帰宅して、デートの支度をすることにした。
とはいえ、澪の家でシャワーを浴びてきたので、着替えるぐらいしかやることはない。待ち合わせの時間までは、二時間以上ある。
家にいると寝てしまいそうなので、着替えてひと息ついてから、周辺を散策しつつ駅近くの書店で時間をつぶすことにした。
吉祥寺は「住みたい街ランキング」で、常に上位にランクインしている人気の街だ。駅前には大型商業施設や商店街があり、買い物には事欠かない。
平日でも多くの人がいるが、週末ともなると駅周辺は特に混雑している。最初は目が回るような感覚になったが、少しずつ慣れてきた。
自宅マンションから駅に向かう道の途中に、大きな書店がある。本好きの壱弥にとっては、そこが一番のお気に入りスポットだ。
店内を物色していると何冊か買いたい本を見つけたが、デート前に荷物は持ちたくないので、取り置きをしてもらうことにした。
そうこうしているうちに、あっという間に待ち合わせの時間になったので、壱弥は駅の北口広場へ向かった。
澪が言っていた「はな子ちゃん」とは、吉祥寺駅の北口広場にあるゾウのモニュメントのことだ。はな子はかつて井の頭公園で飼育されていて、国内で飼育されたもっとも長寿のアジアゾウとして知られている。六十九歳でその生涯を閉じたあと、市民などからの募金によって銅像が設置されたらしい。
上京して二か月しか経っておらず土地勘が掴めていない壱弥にとって、はな子のモニュメントは一番分かりやすい待ち合わせ場所だった。
「あ、来てくれた」
ベンチに座っていた澪が、すぐに壱弥を見つけて立ち上がる。
髪を下した姿は初めて見たので、一瞬誰だか分からなかった。上品なフリルブラウスに、少し個性的なアシンメトリーのロングスカートがよく似合っている。
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