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第1章
12. 続1on1
しおりを挟む体育館の外に目をやれば暮れなずむ空が見える。
十八時。全体練習が終了した。
体育館の使用は二十時まで。ここからは自主練習を行うことができる。
遥は昨日の1on1の続きをしようとつかさに持ちかけた。つかさは二つ返事で勝負を受けた。
つかさが先制ゴールをあげた昨日の続きからではなく、仕切り直して、今回は遥のオフェンスから始めることになった。
1on1の邪魔にならない場所で環奈と早琴が観戦している。
つかさと相対する。
中腰になりボールを腰の右側に保持し、どう攻めようかと思案する。
まずは安易にドリブルはせず相手の目や足元を見ながら、左足を軸に左右に揺さぶりをかけた。大きく踏み込んでもみた。つかさはどの動きにも不用意な反応をしてこない。
探りをいれてみて、つかさはディフェンスもしっかりできる印象を受けた。それともう一つ。自分の足腰がふわふわして地に足がついていないような感覚があった。
ブランクによる筋力の低下。メンタルの問題。
おそらく両方だろうと考える。
どうであれ、今は目の前の勝負に集中しようと切り替える。
右に素早くフェイントを一つ。後ろに引いた右足で床を蹴り、やや前のめりになって左斜め方向へ一歩踏み込んだ。つかさはぴたりとついてくる。振り切れそうにない。
遥はそこで急激にスピードを落とした。前傾していた体がふわっと起き上がる。なおもつかさの体勢は崩れない。次の瞬間、遥は前傾姿勢となり一気にスピードを上げてリング方向に踏み込む動きを見せた。
この緩急を使った攻撃にもつかさは振り回されることなく、遥の進行方向をきっちり体で止めてきた。
こんなことでマークを外せないのは想定内だった。やっぱり抜けそうにないと判断した遥は、同時にシュートまでの動きがイメージできた。
ステップバックしてスペースを作ってのジャンプショット。
このタイミングなら、いける!
踏み込んだ右足をつかさとすれすれのところで突っ張り急ブレーキをかけた。勢いを受け止めた右足一本で飛びすさり――
あれ?
初めて経験する不思議な感覚だった。
後方へ着地し、そのままの流れでジャンプショットに繋げようとした。
だが、つかさとの間にスペースは生まれていなかった。とてもじゃないがシュートを打てる間合いではない。
ボールを持ったことでドリブルがなくなったと見るや、つかさは更に距離を詰めてきた。
遥はピボッドを踏んでどうにかシュートコースを作り出そうとするも、つかさのプレッシャーにより重心が後ろに傾く。のけ反るような体勢に追い込まれた。こうなっては非常に分が悪い。
やむを得ず、体勢が崩れた状態のまま後ろに飛ぶ。苦し紛れに放ったボールはつかさの手に阻まれ、ぽとりと床に落ちた。
「ブランク?」
たしかにブランクを感じた場面があった。しかしつかさにとって遥の動きは初見だったはず。どうやってその答えにたどり着いたのだろう。
「ステップバックしてから着地するまでそんな顔してた。ワンテンポか、それ以上体が遅れてついてきた?」
まさにその通りだった。そこまで表情を見ていられる余裕があったのか。
「うん。時間が止まったみたいでびっくりした」
イメージと現実の間に生じた齟齬が原因だった。頭の中に映し出されたシュートまでのビジョンは中学時代の動き。しかし現状の遥では頭に描いたスピードに体が追いつかずイメージだけが先行することとなった。ここで生まれたイメージとのズレが遥に不思議な感覚を与えた。
とはいえイメージ通りに動けていたとしてもシュートは打たせてもらえなかったことを遥は認めていた。それにつかさはまだまだ余力を残している。今の自分には彼女の本気を引き出せないと感じた。
攻守交替で続行。
結果は遥の完敗だった。
初回のオフェンス以降、遥にオフェンスの機会が回ってきたのは一度だけで、それもつかさのミスショットにより得られたターンだった。そこでも遥はゴールを奪うことができず、完封負けを喫することとなった。
1on1終了後は、シュート感覚も相当鈍っていたのでじっくりシューティングを行った。
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