Girls×Basket〇

遠野そと

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第1章2 無名の怪物

17. ベスト4

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 全体練習終了後、部員全員が岩平のもとに集合し話を聞く。

「あ、そういやスポーツテストの五十メートル走でバスケ部の一年生が六秒台出したって聞いたぞ」
「はい。出しました」環奈が答えた。
「え、まさか」もなかが目を見開く。
「違いますよ。私なわけないじゃないですか。早琴さんとつかささんです」
「さっこちゃんてそんなに足速かったの」もなかが驚嘆した。「つかさちゃんはなんとなく予想できたけど」

 岩平がタイムを聞いた。

「私は6秒4です」

 あ、でもちゃんと計ったらそんな速くないと思います、と早琴は念を押す。

「つかさは?」
「6秒7」
「はあああ。この速さを活かさない手はないな」
「その速さに私たちが合わせられるかな」もなかが言った。
「そのうち慣れるよ。同じスピードで走れってわけじゃないんだから」
「それもそうだね」
「それにスピードだけを前面に押し出すわけじゃない」
「しんどいもんね」
「身も蓋もないな。けどその通りだよ。うちは交替がほとんどできないってのも考えないといけない。まあ交替メンバーが多くてもスピードだけに頼ることはないけど」
「なんかこういう話してるとチームっぽいね」
「チームなんだよ」と杏。
「わかってるけどさ。やっぱりなんて言うか、チームっぽいじゃん」

 岩平は微笑する。

「あ、そうだ。総体の目標はどうする。それによっては今後の予定も変わってくるけど」
「もちろんベスト4」威勢よく杏は即答した。「ほんとは優勝って言いたいところだけど、まずはベスト4」
「舞はんとの最後の公式戦にしたくないもんね」

 遥は内心首を傾げる。
 県予選で優勝しなければ全国大会には出場できないはずだ。
 ベスト4に入ればどうなるのだろう。
 ぼんやりした表情を見るに早琴も理解が追いついていない。そんな二人の様子を汲んで環奈が解説してくれた。

「総体県予選でベスト4に残ったチームにはウィンターカップ県予選への出場権が与えられるんです」
「え、そうなの。また地区予選からじゃないんだ」
「はい。他の都道府県では地区予選から行うところも珍しくありませんが、残念ながら千葉県では現状そういうことになってます。ですので次の大会でベスト4に残れなければ三年生は引退です」
「バスケって夏で引退じゃないんだ」
「冬まで残る残らないは個人の自由なので、強豪校以外の学校では受験やその他の理由で夏で引退する方も多いですけどね」

 遥はちらりと舞を窺う。

「一応言っとくけど目標は大きくってやつじゃないよ。あたしはこのメンバーでならいけると思ってる」

 舞が静かに頷いた。

「私もそう思います」と環奈。
「うん。がんばろうね」

 瞳を輝かせながら、もなかは気負うことなく一年生に声をかけた。 

「はい」

 返事をした早琴も気後れせずやる気になっている。つかさは心なしか楽しそうにしていた。

 地区予選開始までに残された時間は約二ヶ月。加えて急造チームである。県ベスト4という目標は生易しいものではないが、遥はその目標設定に異存はなかった。
 うし、と岩平が手を叩いた。

「そんじゃあチームのスタイルは練習試合なんかでいろいろ試しながらものにしていくってことで、今日は終わり」


 翌日、初の休日練習は昼前に終わった。
 遥たちは岩平の周りへ集合する。

「次の土曜、練習試合組んだから」
「どことどこと」

 いの一番にもなかが食いついた。

「東京の東陽高校。場所も東陽高校。何校か集まって試合するらしいからうちも入れてもらった。ちなみに学校からバスで行くから。朝はちょっと早いけど遅れるなよ」
「強いの?」
「東陽は東京のベスト8。他の高校はどうか知らねえけど弱くはないはず」
「いきなり強いね」
「ベスト4」
 
 岩平がぽつりと言った。

「そうだった」
「あとは相手を選んでられるほど時間がないってのもある。大会前になるとどこも試合受けてくれないからさ」
「そっかあ。となるとますます貴重な実戦練習だね」
「ぼろくそにやられても落ち込んでる暇ないぞ」
「だいじょぶだいじょぶ」杏が胸を張った。「もしぼこされても強いチームとの実力差がどれくらいあるのか、現実を早い内に知れるからありがたいくらいだよ」

 遥も強いチームがどれほどの実力か早めに知っておきたかった。

 でも圧倒的な差を突きつけられたら……。
 知りたい反面怖くもあった。残り少ない時間でそのレベルに近づくのは無理だと思ってしまわないかと、怖かった。

 とはいえ新チームでの初試合。今は楽しみのほうが大きかった。
 個人的にもできる限りの準備をしておこう。

 練習試合まで一週間。


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