Girls×Basket〇

遠野そと

文字の大きさ
20 / 51
第1章2 無名の怪物

20. 昼休憩

しおりを挟む
 
 第一クォーター終了。

 遥は肩で息をしていた。ただでさえ久しぶりの試合で辛いというのに高校の試合は中学より一クォーターあたり二分も長かった。

「さっこちゃん大丈夫?」

 自分よりもずっと辛そうにしていたので思わず声をかけた。

「……なんとか」

 二分間のインターバルはあっという間に終わった。再びコートに出る。


 二クォーター制で行われた試合は31-48で御崎高校が敗れた。

 以下、個人得点

      PTS
   舞  14
   杏   6
  もなか  6
  つかさ  3
   遥   2
   早琴  0


 予定通りここで昼休憩が挟まれた。

「さあつかさ、お待ちかねのお昼ごはんだぞ。頼むから次は食べ過ぎて動けないとかやめてくれよ」

 岩平が冗談めかして言った。

「それは大丈夫」

 言い切ったつかさだったが、次の瞬間固まって青ざめた。膝から崩れてへたり込んだ。

「おいどうした。今度はなんだ」

 つかさは床に肘をついた体勢で消え入りそうな声を出した。

「おひるごはんもってきてない」

 岩平はほっとした顔をした。

「なんだそんなことかよ。それならどうとでもなるから安心しろ」
「近くにコンビニもあったしね」ともなか。「なんなら私たちのお昼ごはん分けてあげるよ」

 荷物を取りに更衣室へ向かう。どこで食べようかとなり、とりあえず外に出ようとなった。つかさはみんなから昼食を分けてもらうことになっていた。
 部員全員で体育館を出て校内を歩いていると中庭にたどり着いた。テーブルベンチが置かれている。その内のいくつかは桜の木陰に入っていた。

「お、ここいいじゃん。ここで食べようよ」

 昼食後、「そういえばさ」と杏が環奈に話しかけた。「前に遥のパスがすごいって言ってたよね」
「すごいですよ目のさめるようなと言うか普通の人には見えてないところを通す感じですよね」
「どうなんだろう」

 遥は返答に困った。パスがうまいとか得意といった自覚があまりなかった。ただ、パスをするのは昔から好きだった。

「私はすごいと思いますよ。中学の大会で遥さんの試合観てて、それもボールのあるところだけじゃなくてしっかり全体を見てたのにそんなとこにパス通るんだって何回も驚いた記憶があります」
「でもそれは味方がパスコースを作ってくれたからそこを通しただけで、あれって私がすごいことになるのかな」
「普通は見落としますし、気づいてもタイミング合わないですよ」
「普通のパスの精度もすごかったんだよ」
 
 もなかが、いかに遥のパスが受けやすく、そしてシュートに繋げやすかったかを伝える。

「でもそういう派手なのも見てみたいな。うちではやっぱりまだみんなの動きが噛み合ってないからそういうパスって出せない?」
「みんなの動きがというより高校のほうがディフェンスのプレッシャーが強いせいでまだ余裕がなくて視野も広く持てないので難しいです」
「そっか。ブランクもあるし今日の相手は強いもんね」
「まあ通ると思ったらそういうパスも含めてどんどん出してよ」杏が言った。
「わかりました」

 中庭に風が吹き抜けた。桜の枝がなびいた。遥はテーブル上で揺れる陰を眺める。

「気持ちいいー」

 ベンチに腰掛けたまま杏が伸びをする。

「休憩終わったらうちと東陽で試合だったよね」
「そうだよ」

 もなかは答え、遥の頭に手を伸ばした。すぐに手を引くと桜の花びらをつまんで見せた。宙空で指先を離し花びらは風にのって流されていった。

 体育館へ戻った遥たちは試合に備えて御崎ベンチ側のハーフコートで体を動かす。反対側のコートには東陽が入っている。
 ほどなく岩平がやってきた。シューティングの途中で集合がかかった。

「食べすぎなかったか」

 岩平がつかさに聞いた。

「大丈夫」
「調子はどうだ」
「絶好調よ。今なら五点くらい取れそうだわ」
「お、おう。ワンプレーでってことか?」
「もちろん」
「もちろん?」
「これなら初見の相手は一歩も動けないね」もなかが嬉々として言う。
「ああそれからさっこにも出てもらうからそのつもりでな」

 試合開始まであと三分。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...