やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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大相撲⇔アンドロイド⇔逃げる女

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『捕まえてみなよ』
 女の声が、グルグルと頭の中を回転している。
(女は、捕まえたら解決の糸口が掴めると言う)
 倉橋は走った。
 追跡は、昨日の夜から続いている。この未来都市を、倉橋は全速力で走り続けている。
 何時間もぶっ続けで走り続けても、全く疲れないのは、自分がもう人間では無い証拠なのだろう。
 昨夜、走っている途中で、スマホを拾った。スマホには『5Ḡ』と、文字が入っている。倉橋は、電子機器に詳しくなかった。 
 ――理数系が得意でメカにも強く、さらに野球が上手かったのは兄貴の方である。
 倉橋は、今さらながら兄貴の偉大さに気付いた。
「だが、もう兄貴は死んだ」
 倉橋は泣いた。
 否。正確にいえば、泣いたつもりだったのだが、涙は一滴も出なかった。
 ある程度、予想はしていたが、自分が《もう泣くことができない》と知った時は、愕然とした。

 その時、スマホに電話が、かかってきた。
「アンタ、何やってるの」
 あの女だった。
「ドコにいるんだ?」
 倉橋は怒鳴った。
 ちょうど、数分前に女を見失ったばかりだった。
「今、お相撲観てるの」
「相撲?」
「そう。相撲DADA会場にいる。今日は外国の偉い人が見に来てて、警備も厳重だけど……」
 電話は、そのまま切れた。
「相撲DADA会場だと?」
 倉橋は呟く。
 スマホには、地図が表示されていた。《相撲DADA会場》は、ここから1キロくらい離れた下町の中にあるようだ。
「待てよ、待て待て……」
 倉橋は、周囲を見渡した。
 北北西に進路を取れ――そこが、女のいる《相撲DADA会場》である。 
「よし」
 倉橋は走り出した。
 思い立ったら吉日――相撲会場行き、迷っている場合では無かった。

 
   この時点では、倉橋のような新米アンドロイドに、どんな運命が待ち受けているのかなど知る由もなかったのだ――
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