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【第7章：黎明の大地と神代の決戦】 ――プロローグ：「神の器と、壊れかけた空」

　かつてこの世界には、神々と呼ばれた者たちがいた。

　炎を操り、大地を裂き、空を翔け、星すらもその手で導いたという古の存在――だが、彼らは“争い”によって滅びた。

　ある者は神の座を捨て、ある者は人へと堕ち、そしてある者は“器”に記憶と力を封じてこの世を離れた。

　それが、後に「神代兵装（アルカ・アーム）」と呼ばれるものの起源である。

　その断片がいま、神話にすがるように崩壊しかけた空から、地に落ちようとしていた。

　場所は、〈黎明の大地ヴァル・ノクス〉。

　かつて“神々の離宮”と呼ばれた浮遊島群――高度な浮上術式で空に保たれた失われし都市の一つ。
　現在は浮力の中枢装置「虚空機関（ヴォイド・ハート）」の老朽化により、空に裂け目が走っている。

　都市は崩落の危機に瀕し、かつて神の意志を奉じた機構《黎明評議会》もまた、混乱と腐敗の中で機能不全を起こしていた。

　だが――その地に、運命が集い始める。

　

　「……浮島が、落ちてくる……？」

　聖都リュヴァーンでの激戦を終えた隼人のもとへ、最前線で活動する精鋭探索師からの一報が届く。

　内容は、“空に浮かぶ遺跡都市が、地表に向かって崩壊しようとしている”という驚愕の報せ。
　しかもその墜落予測地点は――世界樹の大根幹が眠る、「神代樹海（アルセノアの森）」。

　それは単なる災害ではない。

　もし墜落が現実になれば、世界の魔力循環が乱れ、全ての文明技術の基盤である“空間術式”が崩壊しかねない。

　さらに悪いことに、消息を絶っていた“灰の楽園”の残党が、崩壊寸前の浮島に潜伏している可能性が浮上した。

　

　「放っておけねぇな……あそこには、まだ“遺された何か”がある」

　隼人は、自らの作った祈刃を背に、再び旅立つ決意を固める。

　その傍らには、真紅の瞳を宿した少女・フィリア、
　静かなる風を操る守り手・カスミ、
　そして、忘却工房で自らの過去を取り戻した青年・アッシュブランド。

　さらに、今回の任務に新たな仲間が加わる。

　――金の髪と青い紋章眼を持つ、神代文字を自在に操る少女。
　名をリリシア・ヴァルノス。

　黎明都市と同じ名を持つその少女は、果たして敵か、味方か。
　彼女は告げる。

　「この世界は、すでに“選択”を迫られているの。あなたたちが何を護り、何を壊すかによって、未来そのものが決まるわ」

　

　浮島が落ちるまで、残された時間は、わずか三十日。

　“空に棲む神の記憶”を巡る、決戦の章が幕を開ける。

　――これは、“願いの刃”が、世界の命運を切り開く物語。