オリンピック選手金メダリストが転生後、最高の武器屋のマスターになった

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【第7章:黎明の大地と神代の決戦】 第7話「器の決断――リュミエル vs アヴィ=ノクス」

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空が裂ける音がした。

 それは雷のような轟音でも、爆発でもない――静かで、乾いた破裂音。
 まるで世界そのものが拒絶の意志を示したかのような、絶対的な否定の音だった。

 

 浮島〈ヴァル・ノクス〉を見下ろすように現れたのは、銀の鎧を纏い、黒の翼を持つ少女。

 ――アヴィ=ノクス。かつて、神代においてリュミエルと共に浮島を守っていたもう一人の“器”。

 けれど今、その瞳には微塵の慈悲もなく、ただ冷酷な光だけが宿っていた。

 

 「裏切り者リュミエル。あなたは本来、器としての責務を果たすべきだった」

 「わたしは、空を守る。それが――わたしの意志よ」

 

 リュミエルの声は静かだった。だが、その芯には揺るぎのない決意が宿っている。

 

 「器が意志を持った時点で、それは器ではない。貴女は、ただの“欠陥品”に堕ちた」

 「違う! 意志があるからこそ、守りたいと思える!」

 

 アヴィの手に、漆黒の槍が現れる。それは魔導因子を凝縮した“神槍オルドレイン”、浮島の制御核そのものを破壊する力を持つ。

 対するリュミエルも、両の掌に白金の光を灯す。
 それは、古の記憶を辿るような優しい輝き――神代魔術《エアリエル》。

 

 「やめろ、二人とも!」

 隼人が叫ぶが、空に舞い上がった彼女たちの戦いを止める術は、もはや誰にもなかった。

 

 ――一閃。

 

 神槍と神術がぶつかり合い、空間がきしむ。
 風が狂い、雲が砕け、浮島の結界が音を立てて揺れた。

 

 「こんな力……どうして……」

 リリシアが絶句する。

 

 「これは……“神代の因子”同士の衝突よ。魔法じゃない。意思のぶつかり合いが、現実そのものを変えてる」

 フィリアの言葉に、全員が凍りつく。

 

 リュミエルとアヴィの戦いは、ただの戦闘ではない。
 それは、“この世界にとって何が正しいか”を決める、神代の記憶と記録の争いだった。

 

 「どうして……わたしに刃を向けるの?」

 リュミエルの問いに、アヴィは冷たく言い放つ。

 

 「神を裏切り、人に心を寄せた器に未来はない。わたしは、“神の完全性”を守るために作られた。あなたが人の心を得た時、わたしはあなたの処分を決意した」

 

 その刹那、アヴィが急降下する。神槍を突き立てるように、リュミエルへと突進。

 

 「リュミエル!」

 隼人が叫ぶ。が、彼の声は届かない。

 

 だが――次の瞬間、リュミエルの魔法陣が逆光のように弾けた。

 

 「《エアリエル・ゼクス》!」

 六重の光輪が展開し、アヴィの突撃を押し返す。

 宙に舞い上がったリュミエルは、静かに言った。

 

 「あなたを否定したくない。だって、わたしたちは同じ……浮島を守るために作られた、願いの器だから」

 

 「ならば、その願いを――力で証明してみせろ!」

 

 ふたりの神代の器が、再びぶつかる。
 だが、今度の交錯には、かすかな“迷い”が混じっていた。

 リュミエルの覚悟と、アヴィの絶対性。
 どちらが正しいのか、それを決めるために――

 

 戦いはなお、空の果てで続いていた。
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